2019年07月10日、日本のハイテク産業に緊張が走っています。日本政府による韓国への輸出規制強化が発表され、国内のパソコンメーカー各社は対応に追われることとなりました。この波紋は、単なる二国間の経済摩擦に留まらず、私たちの生活に欠かせないデジタル機器の生産体制そのものを揺るがしかねない事態へと発展しています。
長野県安曇野市に拠点を置き、こだわりのモノづくりを貫くVAIOの林薫取締役は、2019年07月09日に深刻な懸念を表明されました。「部品調達に影響が出るのは間違いない」という言葉には、現場の切迫した状況がにじみ出ています。同社は、供給網の寸断を避けるため、韓国以外の国から部品を確保する「代替調達」の検討を本格的に開始した模様です。
今回の事態は、SNS上でも「国産PCの価格が上がってしまうのではないか」「半導体の供給が止まったら仕事にならない」といった不安の声が数多く投稿されています。特に「半導体(電気を通す物質と通さない物質の中間の性質を持ち、情報の記憶や処理を司る電子部品)」は、現代の産業の米とも呼ばれる重要アイテムであり、その供給不安は消費者にとっても他人事ではありません。
サムスンやSKハイニックスが握る「半導体大国」の牙城
世界に目を向けると、韓国のサムスン電子やSKハイニックスの存在感は圧倒的です。彼らは半導体メモリーの分野で、世界シェアの5割から7割という驚異的な占有率を誇っています。シャープの子会社であるダイナブックの覚道清文社長も、現時点では影響を見通せないとしつつも、韓国からの供給が滞るリスクを強く意識せざるを得ない状況にあります。
この危機に対し、韓国側も必死の防衛策を講じているようです。サムスン電子の幹部は、半導体製造に不可欠な「エッチングガス(フッ化水素)」を求めて台湾へ急行しました。このガスは、半導体の回路を作る際に不要な膜を削り取る洗浄工程で使用される極めて純度の高い化学物質で、日本の素材メーカーが世界的に高い技術力を持っている分野です。
サムスンの李在鎔副会長も、2019年07月07日に自ら日本を訪れ、メガバンク幹部や取引先と面会を重ねるなど、トップ会談を通じて在庫確保に奔走しています。一時は1カ月分程度だった在庫を、現在は3カ月分まで積み増したとの見方も浮上していますが、予断を許さない状況が続いているのは、周辺企業へ送られた「安定供給のお願い」メールからも伺えます。
拡大する規制への警戒心と長期化する審査の壁
経済産業省による個別の輸出審査には、通常90日前後の期間を要するとされています。感光材である「レジスト」を取り扱うJSRなどの素材メーカーからは、手続きの複雑化に伴う事務負担の増大を嘆く声が上がっています。事務処理の遅延は、そのまま生産ラインの停止に直結する恐れがあるため、日韓両国の現場にはこれまでにない緊張感が漂っています。
さらに懸念されているのは、規制対象がリチウムイオン電池や工作機械などの他分野へ拡大することです。LG化学の辛学喆副会長は、2019年07月09日にソウルでの記者会見で、対象品目が増える最悪のシナリオを想定した対策を講じると明言しました。調達先の多角化を急ぐ姿勢からは、この問題が短期間では解決しないという覚悟が感じられます。
個人的な見解としては、グローバル化した現代のサプライチェーンにおいて、特定国への過度な依存が露呈した形だと感じます。政治的な背景は複雑ですが、確かなのは、日本の優れた素材技術と韓国の強力な生産能力が補完し合ってこそ、世界をリードする製品が生まれてきたという事実です。一刻も早く、両国の産業界が安心してモノづくりに専念できる環境が整うことを切に願います。
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