2019年08月23日、ドナルド・トランプ米大統領は、中国から輸入される2500億ドル相当の製品に対する制裁関税を、現在の25%から30%へと引き上げる方針を打ち出しました。この措置は2019年10月01日から実施される予定であり、世界経済に激震が走っています。貿易における「制裁関税」とは、特定の国からの輸入品に高い税金を課すことで、自国の産業を守ったり相手国に政治的な譲歩を迫ったりする強力な手段ですが、その代償は決して小さくありません。
さらにトランプ政権は、これまで10%を予定していた「第4弾」の制裁についても、税率を15%に積み増すと発表しました。この第4弾は、2019年09月01日からスマートウォッチや半導体メモリーなどを対象に発動される見込みです。米通商代表部(USTR)の発表によれば、今回の決定によって年間約5500億ドルにのぼる中国からの全輸入品に対し、一律で5%の関税が上乗せされる形となります。これにより、産業界だけでなく一般消費者の生活にも大きな影響が及ぶのは避けられないでしょう。
SNS上では、この突然の発表に対して「iPhoneや家電が値上がりするのではないか」という不安の声が相次いでいます。また、「米中両国の意地の張り合いに世界が巻き込まれている」といった悲観的な意見も目立ち、マーケットの先行き不透明感に対する懸念が急速に広がっているようです。投資家たちの間でも、この関税合戦が泥沼化することによる株価への悪影響を恐れる声が強まっており、ネット上はまさに蜂の巣をつついたような騒ぎとなっています。
報復が報復を呼ぶ負の連鎖!世界経済に漂う暗雲
今回の米国の決定は、中国政府が2019年08月23日に発表した対抗措置への即座のレスポンスでした。中国側は、原油や農産物など約750億ドル分の米国製品に5~10%の報復関税をかけると表明したばかりです。このように、一方が関税を上げればもう一方がやり返すという「報復の連鎖」は、まさに経済的な冷戦状態と言えるでしょう。中国の習近平指導部も一歩も引かない構えを見せており、対立は深まる一方です。
私は、この状況を非常に危惧しています。自由貿易がもたらす恩恵を互いに享受してきた両大国が、自国のプライドと政治的思惑のために、世界全体のサプライチェーン(部品調達から製造、販売までの一連の流れ)を破壊しかねないからです。特に、スマートフォンやノートパソコンといった輸入依存度の高い製品にまで15%の関税が課される2019年12月15日の発動予定分は、米国の個人消費そのものを冷え込ませる劇薬になりかねません。
米中両政府は、2019年06月末の首脳会談で交渉再開に合意したはずでしたが、2019年07月末の閣僚級協議では目立った進展が見られませんでした。2019年08月に入り、米国が中国を「為替操作国」に指定したことも火に油を注いでいます。これは、中国が輸出を有利にするために意図的に人民元安に誘導していると米国が断定したもので、金融分野にまで対立の火種が燃え移ったことを意味しているのです。
2020年の米大統領選を控え、トランプ氏は支持層に向けて「強いアメリカ」を演出する必要があります。しかし、その強硬な姿勢が結果として世界経済をリセッション(景気後退)に導くリスクは否定できません。華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置強化を含め、ハイテクや安全保障の領域でも対立は深刻化しており、私たちは今、歴史的な経済の転換点に立ち会っていると言っても過言ではないでしょう。今後の協議の行方に、世界中が固唾を呑んで注目しています。
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