建設業界に新たな風が吹き抜けようとしています。準大手ゼネコンの戸田建設は、2019年09月02日、高層ビルをはじめとする大規模な建設現場において、再生可能エネルギーを大量に導入する画期的な方針を打ち出しました。これは単なるコスト削減の取り組みではなく、地球環境への深い配慮と持続可能な社会への貢献を世界へ示す、極めて野心的な経営戦略の第一歩と言えるでしょう。
その象徴的な舞台となるのが、東京駅の目の前で進められている「東京駅前常盤橋プロジェクト」のA棟新築工事です。2021年04月30日の完工を目指し、地上40階、高さ約212メートルにも及ぶ巨大なタワーが姿を現しつつあります。この広大な現場で消費される莫大な電力が、2019年09月よりすべて二酸化炭素の排出を伴わない、クリーンなエネルギーへと一気に切り替わるのです。
SNS上では、この大胆な決断に対し「工事現場という、一見すると環境負荷が高そうな場所でこそ価値がある」「これからのビル選びは『どう建てられたか』も基準になりそう」といった驚きと期待の声が広がっています。企業の社会的責任が問われる現代において、この挑戦はまさに時代の要請に応えるものかもしれません。投資家や未来の入居企業にとっても、非常にポジティブなメッセージとして受け止められることでしょう。
建設現場の常識を覆す「非化石証書」と再エネの仕組み
これまでの大規模な工事現場では、大手電力会社からの受電や、重油を用いた自家発電が主流でした。しかし戸田建設は、今回エバーグリーン・マーケティングから再生可能エネルギーを調達する手法を選んでいます。ここで鍵となるのが「非化石証書」という仕組みです。これは石油や石炭などの化石燃料を使わずに発電された電力であることを公的に証明するもので、環境価値を形にしたものとお考えください。
この証書には、太陽光や風力といった発電の種類だけでなく、どこの発電所でつくられたかという履歴まで詳細に記録されています。専門的な視点で見れば、電源の「トレーサビリティ(追跡可能性)」が確保されている点が非常に重要です。近年、発電事業者の多様化が進んだことで、再生可能エネルギーの調達環境は大きく改善されました。状況によっては、従来の電力料金よりも数パーセント程度安く抑えられる可能性も秘めています。
私は、この「コストを抑えつつ環境価値を追求する」姿勢こそが、ビジネスにおける持続可能性の理想形だと考えています。環境保護を単なる慈善活動に留めず、事業の競争力に直結させる戸田建設のやり方は、他業界にとっても大きなヒントになるに違いありません。エコであることは、もはや経済合理性と矛盾するものではなく、むしろ新たな付加価値を生み出すための必須条件となっているのです。
「RE100」への誓いと、ゼネコン初となる壮大な挑戦
戸田建設がここまで徹底するのは、2019年01月に加盟した「RE100」という国際的な企業連合への誓いがあるからです。これは事業活動で使うエネルギーを100パーセント再生可能エネルギーで賄うことを目指すグループを指します。同社は、2040年までにその半分を、そして2050年には完全な達成を掲げています。今回の現場導入は、そのマイルストーンを力強く踏み出すための大きな推進力となるでしょう。
実は、同社の全電力消費量のうち、約9割が建設現場によるものです。つまり、現場でのグリーン化が進まなければ目標達成は絵に描いた餅になってしまいます。一部の研究施設などでは先行して導入が進んでいましたが、これほどの高層ビル建設において全電力を再生可能エネルギーで賄う試みは、国内のゼネコンでは前例がない快挙です。ハウスメーカーによる再開発事例はありますが、大型建築の主役であるゼネコンが動いた意味は極めて大きいと言えます。
戸田建設は今後、この東京駅前のプロジェクトを皮切りに、全国の受注案件へも同様の取り組みを広げていく構えです。2019年度の受注予測は厳しさを増していますが、環境配慮という「高付加価値」を武器に、差別化を図る戦略は極めて賢明でしょう。建物の完成図だけでなく、その「つくりかた」までもが誇れる時代がすぐそこまで来ています。この革新的な歩みが、建設業界全体のスタンダードを底上げすることを期待してやみません。
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