ギャスパー・ノエ最新作『CLIMAX クライマックス』公開!批判を壁に貼る鬼才の「狂気と色彩」の哲学

アルゼンチン出身でフランスを拠点に活動する映画監督、ギャスパー・ノエ氏は、これまでも暴力や性といったタブーに真正面から切り込み、観客を激しく揺さぶってきました。2019年11月05日現在、全国で公開されている最新作『CLIMAX クライマックス』も、その過激な作風から評価が極端に分かれています。2018年5月のカンヌ国際映画祭での初上映時には、絶賛の声が上がる一方で、拒絶反応を示す観客も続出しました。

これに対し監督は、否定的な批評さえも創作のエネルギーに変えていると涼しげに語ります。SNS上では「トラウマ級の映像体験」や「二度と見たくないが目が離せない」といった中毒性の高さを指摘する反響が相次いでいますが、監督本人は批判記事をわざわざ壁に貼って楽しんでいるそうです。万人受けを狙わず、独自の美学を貫く姿勢こそが、彼を「鬼才」たらしめる最大の要因なのでしょう。

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実際の事件から描かれる集団心理の崩壊

本作の舞台は、雪に閉ざされた廃墟に集まった22人のダンサーたちのリハーサル風景です。1996年に実際に起きた事件に着想を得たこの物語は、誰かが飲み物に薬物を混入させたという疑惑から、一気に地獄絵図へと変貌します。監督が描こうとしたのは、不確かな疑いが集団全体を飲み込み、人々が正気を失っていく過程にある精神的な脆さです。

「即興演出」という手法も特筆すべき点でしょう。出演者の多くは演技経験のない本物のダンサーであり、監督は彼らに大まかな状況だけを伝え、その場で生まれる生の言葉や動きを尊重しました。あらかじめ決められた「セリフ(台本上の言葉)」をなぞるのではなく、演者の内側から溢れ出す表現を重視することで、観客はまるでその場に居合わせているかのような圧倒的な臨場感に包まれます。

スクリーンを支配する鮮烈な「赤」は、画家の父を持つ彼のルーツから生まれた生命の象徴です。性別や人種を超えて、万人が等しく持つ血の色を通じて人間そのものを描き出す視覚効果は、まさに圧巻の一言に尽きます。私は、この「美しさと不快感」が同居する独特の世界観こそが、現代社会に蔓延する閉塞感を打ち破る劇薬になると確信しています。

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