2008年に熊本県の蒲島知事によって川辺川ダム建設の中止が表明されてから、2019年9月で早くも10年の節目を迎えました。かつてダムの底に沈むはずだった熊本県五木村は、大きな時代の荒波に翻弄されながらも、現在は水没を免れた豊かな自然を武器に、自立した村づくりへの歩みを力強く進めています。この10年間は単なる現状維持ではなく、村の存続をかけた攻めの姿勢が光る歳月となりました。
現在、五木村が特に注力しているのが、地元の特産品であるスギをふんだんに活用した独自の住宅ブランド「五木源(いつきげん)住宅」の展開です。これは村独自の助成制度を設けることで、良質な木材の流通と定住促進を同時に狙う画期的な取り組みといえます。林業を単なる素材生産で終わらせず、価値ある「住まい」として提供する戦略は、地域経済を循環させるための非常に賢明な判断ではないでしょうか。
また、日本屈指の透明度を誇る川辺川を主軸に据えた観光振興も、大きな成果を上げ始めています。かつてはダムに沈むはずだったこの清流を活かし、ラフティングやバンジージャンプといった体験型のレクリエーションが人気を博しており、若者を中心に多くの観光客が村を訪れるようになりました。水没予定地だった場所が、今では人々の笑顔が絶えないアクティビティの聖地へと変貌を遂げているのです。
こうした村の取り組みに対し、SNS上では「ダム中止という苦渋の決断を経て、今の美しい景観が守られたのは素晴らしい」「五木村の清流は宝物。林業と観光がうまく結びついてほしい」といった応援の声が多数寄せられています。一方で、急速に進む人口減少や高齢化という厳しい現実に直面しているのも事実であり、いかにして若年層の雇用を安定させ、移住者を増やしていくかが今後の持続可能性を左右する鍵となるでしょう。
編集者の視点から見れば、五木村の歩みは、公共事業に頼り切らない「地方創生」の先行モデルとして極めて重要です。地方創生とは、その土地にしかない資源を掘り起こし、独自の価値を創造して経済を自立させることを指します。ダムに頼らず、村を支える「源」である森林と水資源を活かそうとする五木村の姿勢は、日本中の過疎に悩む自治体にとって、希望の光となる可能性を十分に秘めているはずです。
2019年09月03日現在、五木村はまさに「集落存続」という壮大なテーマに向き合う真っ只中にいます。過去の混乱を乗り越え、自分たちの足で立ち上がろうとする村の人々の情熱が、清流のせせらぎとともに次世代へと繋がっていくことを願って止みません。これからも、林業と観光の融合という新たな挑戦が、この美しい村にどのような奇跡を起こすのか、私たちは注視し続ける必要があるでしょう。
コメント