栃木県足利市に拠点を置き、自動車や鉄道といった幅広い分野の板金加工でその名を馳せるオグラ金属が、いま大きな変革の時を迎えています。同社は長年培ってきた高度な加工技術と、自社工場の自動化で磨き上げたAI(人工知能)の知見を武器に、2020年度から災害現場向け探査ロボットの製造・販売へ本格参入することを明らかにしました。
今回開発されているのは、地震などで損壊した建物内や、がれきが散乱し人間が立ち入ることが極めて困難な危険地帯を調査するための専用機です。最大の特徴は、キャタピラのような「クローラー(履帯)」を装備している点で、これにより不整地や階段も力強く走破できます。内蔵されたカメラが現場の「今」を映し出し、二次災害を防ぎながら迅速な現状把握を可能にするのです。
SNSではこのニュースに対し、「町工場の技術が命を救うロボットに変わるのは胸が熱い」「消防署に1台あれば救助活動が劇的に変わるはず」といった期待の声が数多く寄せられています。単なる技術展示に留まらず、地元の消防隊と連携して実地テストを繰り返しているという徹底した現場主義の姿勢が、多くの人々の共感を呼んでいるのでしょう。
特筆すべきは、その戦略的な価格設定です。高性能なロボットは高額になりがちですが、機能を災害現場の状況確認に絞り込むことで、1機あたり数百万円という「手の届く価格」を目指しています。技術部の向田和樹さんは、全国の消防署が導入できるような手軽さを追求したいと語っており、その志の高さには編集部としても頭が下がる思いです。
板金加工から農業支援へ!多角化するオグラ金属の野望
オグラ金属の挑戦は、救助支援だけに留まりません。彼らが次に見据えているのは、深刻な労働力不足に悩む農業分野です。2019年度には栃木県の「戦略産業牽引企業支援補助金」の採択も受けており、災害用ロボットで培った悪路走行技術を、急斜面での農作業や作物の生育管理へ応用しようとする試みが着々と進んでいます。
ここで注目したいのは、AIの活用法です。カメラが捉えた画像をAIが解析することで、人の目に代わって作物の健康状態をチェックしたり、環境測定を行ったりするシステムが検討されています。これは、職人技が求められる板金加工の世界で培った「数値化できない感覚をデータ化する」という同社の強みが、農業という異なるフィールドでも最大限に発揮される好例と言えるでしょう。
同社は今後5年間で、ロボットやAI関連事業の売上高を10億円規模まで成長させるという壮大なビジョンを描いています。2019年09月07日現在の売上高約60億円から、さらに一段上のステージへ駆け上がろうとする彼らの動きは、日本の製造業が生き残るための「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の教科書的なモデルケースとなるはずです。
編集部としては、こうした「現場を知るメーカー」がテクノロジーを牽引することに大きな意義を感じます。既存の加工技術に安住せず、社会課題を解決するために自らをアップデートし続けるオグラ金属。彼らのロボットが、いつか私たちの街の安全や食卓の未来を支える日が来ることを、期待せずにはいられません。
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