🍜【ミシュランの衝撃】元フレンチ総料理長が挑む「至高のラーメン」!銀座の人気店「銀座八五」を支える低加水パスタフレスカの秘密とは?

近年、日本の国民食であるラーメンは、目覚ましい進化を遂げ、「国際食」として世界中から注目を集めています。その証拠に、ミシュランガイド東京の和食カテゴリーにラーメンが初めて掲載されたのは2015年版のことで、翌2016年版には早くも星付きの店舗が登場するほどの躍進を見せました。国内外の観光客が話題の一杯を求めて連日行列を成し、海外へ進出した日本の有名店も同様の賑わいを見せています。

このラーメンブームを世界規模に押し上げたのは、SNS、特にインスタグラム(Instagram)の影響が大きいでしょう。「#ramen」というハッシュタグでの投稿数は760万件を超えるという驚異的な反響ぶりです。しかし、ラーメンの地位がここまで向上したのは、やはり、作り手たちの飽くなき探求心によって、料理そのものが絶えず進化を続けているからに他なりません。出汁(だし)素材の厳選と組み合わせ、そしてスープの取り方における創意工夫は目を見張るものがありますし、麺のバリエーションも実に豊かで、店主たちの情熱が個性あふれる一杯を生み出し、その味わいをより洗練させているのです。

そんなラーメンの世界に、2018年12月、東京・銀座で「銀座八五(ぎんざはちごう)」を開店した松村康史さん(60)は、異色の経歴を持つ挑戦者として話題を呼んでいます。松村さんは、かつて京都全日空ホテル(現ANAクラウンプラザホテル京都)の総料理長まで務めた、れっきとしたフランス料理人。京都府の現代の名工に選ばれ、さらには厚生労働大臣表彰も受賞しているほどのベテランシェフが、なぜラーメンの道へ進んだのでしょうか。

その背景には、ラーメン好きが高じたというだけでなく、ホテルを舞台に華やかなキャリアを築いてきたからこそ、「誰もが1,000円以下で楽しめるおいしさを届けたい」という熱い思いがありました。高級割烹料理店を思わせる引き戸を開けて中へ入ると、磨き上げられた調理道具が輝く、白いカバーの椅子が6席並ぶカウンター席があります。漆塗りのカウンターには、お客さま一客ごとにランチョンマットやカトラリー(箸やフォークなど)、おしぼりが丁寧にセットされており、その洗練された空間は、まさに“銀座”の店舗であることを意識して設計されたのでしょう。

提供されたラーメンのスープを口に運ぶと、真綿のように柔らかい舌触りと、澄んでいるにもかかわらずしっかりと厚みのある旨味に、思わず夢中になってしまうはずです。松村さんが目指したのは「お客さんがスープを飲み干すラーメン」なのです。実は、彼が東京で展開する既存の2軒のラーメン店において、製麺所の「浅草開化楼」の製麺師である不死鳥カラスさんと、丼に残されてしまうスープについてしばしば話し合っていたといいます。「最も原価がかかっているのに残ってしまうのがもどかしい」との思いから、松村さんは、従来のラーメンの常識である「タレをスープで割る」手法をやめ、タレ抜きで味が完結するラーメンを作るという結論に達しました。

この発想を後押ししたのは、フランス料理の基礎である「コンソメ」の知識と技術でした。コンソメとは、肉や魚、野菜を煮込んで取った出汁(ブイヨン)を、卵白などを使って不純物を取り除き、透明で深い味わいに仕上げた西洋料理の基本的なスープです。松村さんは、鴨ガラや鴨モモ肉、名古屋コーチンの丸鶏、そしてショウガと九条ネギを煮立て、丁寧にアク(灰汁)を取り除いた後、昆布、イタヤ貝、干しシイタケ、ドライトマトを加えて4時間煮込みます。さらに一晩休ませた翌日、生ハムを加えて仕上げるという手の込みよう。調味は、フランス産のゲランドの塩のみというシンプルさです。

「濃すぎれば残されてしまい、薄すぎるとインパクトに欠ける。そのバランスを取るのが非常に難しい」と松村さんは語っていますが、半年間の試作を経て、ようやく完成にこぎつけました。このフレンチの技法を駆使した至高のスープに対して、製麺師のカラスさんが考案したのが「スープを邪魔せず、最後の一滴まで飲み干させるための麺」です。目指したのは「伸びない、吸わない、溶け出さない麺」という、従来の常識を覆す発想の麺でした。

その実現を可能にしたのが、「低加水パスタフレスカ」の技術です。これは、イタリアンレストランを経営するサローネグループの総料理長・樋口敬洋さんと共に開発した生パスタの一種で、パスタの原料であるデュラム小麦粉を使用しつつ、中華麺の配合と製法を取り入れて作られています。水分量が非常に低いため、一般的なパスタマシンでは壊れてしまうほどですが、製麺所の大きなローラーであれば耐えることができました。この粘り気の少ない性質と低い水分量が、松村さんのクリアなスープにぴたりと合い、互いを高め合う結果となったのです。

カラスさんは、この苦労して開発したレシピと製法を無償で公開しています。その背景には、「ラーメンブームで自家製麺の専門店が増える一方で、昔ながらの街の中華屋が減り、製麺所の経営が厳しくなっている。パスタを作ることで、製麺所を助ける一助になれば」という強い思いがあるようです。「八五」の麺は、この低加水パスタフレスカの水分をかん水に替え、細く切り出して作られています。松村さんからの要望はただ一つ、「3回すすって口に収まる長さ」でした。これは、3回すすることで鼻から香りが抜け、スープの旨味をより強く感じられるように計算された、まさにプロの仕事だといえるでしょう。

松村さんは「ラーメンは料理。想像以上に奥が深かった。突き詰めても突き詰めても終わりがない」と、その探求の奥深さを表現しています。牛の赤ワイン煮込みやオマールのビスク(エビやカニの甲殻類から取る濃厚なスープ)といったフレンチの代表的な料理も好きだけれど、当面はラーメンに没頭するつもりだという言葉には、セカンドキャリアに対する並々ならぬ情熱が感じられます。「八五」は、開店前から長い行列ができるほどの人気店となっており、松村さんの夢は「東京オリンピックの選手村でラーメンを作ってみたい」というもの。ラーメンが国際食であることを、世界のアスリートが集う場で体感したいと願っているのです。

SNSでも「#銀座八五」は大きな反響を呼んでおり、「こんなに透き通ったスープは初めて!」「自家製チャーシューにかかったマダガスカル産の希少なコショウがフレンチみたい」「食後に供される加賀の水出しほうじ茶まで気が利いている」といった、フレンチの要素を取り入れた随所のこだわりを絶賛する声が目立っています。店名は、店舗の広さが8.5坪であることと、「自分はまだまだ8.5合目(富士山の登山において頂上まであと一歩の場所)だ」という松村さんの謙虚な気持ちから名付けられたといいます。フランス料理の技術と日本の製麺技術が融合した、このハイブリッドな一杯は、日本のラーメンの未来を切り拓く、まさに至高のラーメンだと言っても過言ではないでしょう。

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