2019年09月23日、企業経営を揺るがす「デジタル化」の波は、もはや避けては通れない巨大なうねりとなっています。小さな新興勢力が既存の大企業を打ち負かす「ディスラプション(創造的破壊)」が現実味を帯びる中、今、すべての会社に変革の適応力が突きつけられているのです。
こうした状況下で注目を集めているのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という概念です。これは単なるIT化ではなく、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや組織そのものを根底から作り変えることを指します。SNSでは「言葉だけが独り歩きしている」との声も散見されますが、その本質は企業の生存戦略に他なりません。
経済産業省は2019年07月、企業のDX習熟度を測る「推進指標」を公表しました。これは全35項目の問いに対し、0から5の6段階で自己診断を行うもので、いわば「経営の人間ドック」と言えるでしょう。第1問から「顧客視点での価値創出ビジョンが共有されているか」という、経営の根幹を問う厳しい内容となっています。
「アドオン禁止」を連呼したカルビーの覚悟
変革に成功した具体例として、スナック菓子大手のカルビーの取り組みが挙げられます。同社は2016年01月に基幹システムを刷新しましたが、それまでの旧システムには「アドオン」と呼ばれる追加プログラムが5000件も積み重なり、保守コストの増大や動作の遅延を招いていました。
アドオンとは、標準的なソフトウェアに独自の機能を追加することですが、これが肥大化するとシステムが複雑怪奇になり、身動きが取れなくなります。当時の松本晃CEOは「アドオン禁止」を社内で徹底。これは、仕事のやり方をシステムに合わせるという、非常に勇気のいるトップダウンの決断でした。
この決断により、5000件あった追加機能はわずか100件にまで圧縮されました。部分最適の誘惑を断ち切り、全体最適を目指す。これこそがDX推進指標でも問われている「リーダーシップによる機能圧縮」の実践です。現在はAIを用いたジャガイモの選果など、より創造的な分野への投資が進んでいます。
地方銀行の枠を超えた北國銀行のデジタル戦略
一方、石川県の北國銀行も驚くべき進化を遂げています。同行のオフィスにはゴミ箱も書類もなく、徹底したペーパーレス化が実現されています。残業時間は月平均2時間台という驚異的な数字を叩き出していますが、これは単なる働き方改革ではなく、余った力を次世代ビジネスへ投入するための戦略です。
特筆すべきは、2018年から開始された「山中漆器」の生産管理クラウドサービスです。分業制である伝統工芸の工程をデジタルで「見える化」し、サプライチェーン(供給網)全体の効率化を支援しています。銀行が地域のプラットフォームとして、産業の生産性向上を牽引しているのです。
北國銀行は2021年に勘定系システムをクラウドへ移管する計画を立てるなど、歩みを止めていません。DXとはITツールの導入ではなく、ビジョンを持って組織を再定義すること。私の意見としては、これからのリーダーには、古い慣習を捨てる「破壊」と、新しい価値を創る「構想」の両輪が不可欠だと確信しています。
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