イノベーションの鍵は「マイノリティー体験」にあり!OECD村上由美子氏が語る多様性(ダイバーシティ)の真価

国際的な経済協力開発機構、略してOECD(オーイーシーディー)の東京センター所長を務める村上由美子氏が、長年の海外生活で得た「マイノリティー体験」の重要性を深く考察しています。社会の主流派ではない少数派としての立場を経験することで、従来の価値観が通用しない世界における学びや、意思疎通の極意を体得されたと言えるでしょう。特に、カリブ海に浮かぶバルバドスという、元英国植民地の島国での2年間は、その後の人生を決定づける強烈な体験だったと振り返っています。

バルバドスの住民は、わずか3%の白人系を除くと、ほとんどがアフリカ系で占められています。日本人はおろか、アジア人を見たことのない人々に囲まれた生活は、最初期のコミュニケーションを非常に困難なものにしました。アメリカ英語に慣れていた耳にはバルバドスなまりの英語はまるで理解できず、また、目に焼き付いた白人とアジア人の識別基準では周囲の人々の見分けもつかなかったそうです。しかし、この経験こそが村上氏の人生を豊かにする大きな転機となりました。

自分の従来の物差しや常識が通用しない環境で、異なる価値観や思考回路を持つ人々をどう理解し、真意を言葉にして意思疎通を図るか。その試行錯誤の過程で、時には孤独を感じながらも、貴重な教訓を数多く得られたと言います。例えば、人間関係の構築において、人種や国籍といった属性の差異(アトリビュート・ディファレンス:人が生まれ持ったり所属したりする表面的な違い)よりも、個人個人の内面的な違いのほうが実ははるかに大きな影響力を持つということです。また、たとえ意見に合意できなくても、その異論や反論を誠実に受け入れることが可能であるという、**「異論受容」**の姿勢も体得されました。これらは、日本のように同質性の高い社会ではなかなか自然に学ぶことのできない、極めて重要な教訓ではないでしょうか。

村上氏の考え方は、社会のダイバーシティ(多様性)が叫ばれる現代において、非常に示唆に富んでいると言えるでしょう。世界的企業である米アップルの最高経営責任者(CEO)、ティム・クック氏も、自身がゲイという性的少数者(セクシュアル・マイノリティー)であることを公表しており、この自身の体験があるからこそ、主流派に埋もれがちなマイノリティーの声に耳を傾け、多様な人々への共感力(エンパシー)を持つことができたと述べています。アップルがイノベーションの促進には多様性を受容する企業文化が必要だと深く認識しているのは、クック氏の個人的な体験に裏打ちされているからに他なりません。私自身、このクック氏の言葉は、企業や組織のリーダーにとって、最も重要な資質の一つを示していると強く感じています。

SNS上でも、この「マイノリティー体験のすすめ」という考え方に対して、「留学経験があるが、日本人コミュニティーの外に出る勇気が必要」「自分と異なる視点から世界を見る機会が成長につながる」といった共感の声が多く寄せられています。日本は優れた資金力と技術力を持ちながら、イノベーション(技術革新や新結合)が生まれにくいとされる課題を抱えています。これは、物事が**「あうんの呼吸」**でスムーズに進む同質性の高い環境が、奇抜なアイデアの芽や少数派の貴重な視点を見落としてしまっていることに原因があるかもしれません。

村上氏は、留学や転勤などで海外生活を経験する機会があれば、あえて日本人コミュニティーから一歩踏み出し、マイノリティー体験をたっぷりと積むことを推奨しています。これにより、自身の持つ既存の常識を打ち破る「新しい世界」が見えてくるはずでしょう。もし、企業や国のリーダーたちがマイノリティーの視点を見逃さない高いアンテナと共感力を身につけることができれば、日本は再びイノベーション大国として大きく成長できる可能性を秘めているのではないでしょうか。2019年6月17日に発表されたこの示唆に富む提言は、現代の日本社会に一石を投じるものだと考えられます。

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