実業家・原三溪の審美眼が育んだ名作の数々!「三溪の美術伝説」展で巡る日本美術の精華

稀代の美術コレクターであり、また、近代日本の実業界を牽引した原三溪(はらさんけい)。彼の名は、広大な庭園として知られる横浜の三溪園とともに、多くの人々に記憶されていますが、その卓越した審美眼と芸術家たちへの深い支援によって、数々の日本美術の傑作が世に送り出されたことは、あまり知られていないかもしれません。このたび、彼の旧蔵品が一堂に会する「原三溪の美術伝説の大コレクション」展が、2019年7月13日から9月1日まで横浜美術館で開催されるというのです。この展覧会は、単なる古美術や茶道具の紹介に留まらず、三溪と画家たちとの心温まる交流の物語を伝えるものとなるでしょう。

三溪が特に目をかけ、厚い支援を惜しまなかったのが、近代日本画の巨匠、下村観山(しもむら かんざん)です。観山は、三溪の寵愛(ちょうあい)に応えるかのように、美術史上でも特筆すべき傑作を生み出しました。その一つが、重要文化財にも指定されている「弱法師(よろぼし)」(1915年、東京国立博物館蔵)です。この作品の大きな見どころの一つは、画面いっぱいに枝を広げ、圧倒的な存在感を放つ梅の木ではないでしょうか。この梅は、なんと三溪自らが造園を手がけた三溪園にある臥竜梅(がりょうばい)を参考にして描かれたと伝えられているのです。つまり、三溪の愛した風景が、観山の筆を通して永遠の美として昇華されたと言えるでしょう。

この臥竜梅とは、その名の通り、まるで竜が横たわっているかのように、低く這うように枝が伸びる梅の木を指します。三溪園という空間そのものが、観山の創作意欲を刺激し、インスピレーションの源となったことが窺えますね。SNSでも、「三溪園の梅を見に行きたい」「臥竜梅が弱法師のモデルだなんてロマンがある」といった声が聞かれ、美術ファンだけでなく、園芸愛好家からも熱い注目を集めているようです。今回の展覧会で、この「弱法師」も一部期間(8月9日〜9月1日)で展示される予定とのことで、作品と三溪園の風景を結びつけながら鑑賞できる貴重な機会となるでしょう。

私見を述べさせていただきますと、原三溪という人物は、単なる富豪が趣味でコレクションをしていたというレベルを超越しているように思えます。彼は、現代のパトロン(芸術家や文化活動の支援者)のように、若き才能を見抜き、その才能が開花するための土壌と環境を提供した真の文化人であったと言えるでしょう。彼の支援がなければ、観山をはじめとする多くの画家たちが、これほどのびのびと創造性を発揮し、後世に残る名作を生み出せたかは疑問が残ります。

今回の展覧会では、三溪が蒐集したおよそ150件ものコレクションが紹介される予定です。展示内容には展示替えが予定されているため、訪れる時期によって異なる傑作を堪能できる楽しみがあるでしょう。横浜美術館で2019年7月13日から開催される本展は、原三溪の深い芸術愛と、彼が育んだ日本美術の豊かな精華に触れることができる絶好の機会です。観山との関係性を通して、一人の実業家の存在が、いかにして日本の芸術文化に大きな影響を与えたのかを、ぜひその目でお確かめになってはいかがでしょうか。

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