日本の高齢者の暮らしを根底から支えているのは、言うまでもなく公的年金制度です。しかし、今この制度の足元で「老後の経済格差」という深刻な影が広がりつつあります。保険料の未納や免除が積み重なると、将来受け取る年金が極端に少なくなったり、最悪の場合は一円も受け取れない「無年金」状態に陥ったりする危険があるのです。
特に最近の若年層の間では、奨学金の返済を抱えながら生活しているケースも珍しくありません。日々のやり繰りに追われ、つい後回しにしがちな年金保険料ですが、未納額が雪だるま式に増えてしまうと、後からまとめて支払う「追納」は物理的に困難になってしまいます。現在の苦しみが、そのまま老後の貧困へと直結しかねない厳しい現実が横たわっています。
数字で見る国民年金の現在地と未納のリアル
厚生労働省が発表した2018年度(平成30年度)の「国民年金の加入・保険料納付状況」を紐解くと、驚くべき実態が見えてきます。国民年金の第1号被保険者(自営業者や学生など)は約1471万人存在しますが、そのうちしっかりと保険料を納めている人は約759万人にとどまります。これに対し、全額免除や猶予を受けている人は約574万人にも上っているのです。
SNS上でも「今の給料では払うだけで精一杯」「将来本当にもらえるのか不安」といった切実な声が渦巻いています。特筆すべきは、単なる未納者だけでなく、法的に支払いを待ってもらっている「免除・猶予」の対象者が高止まりしている点でしょう。これは、今の現役世代が直面している経済的な余裕のなさを如実に物語っているといえるのではないでしょうか。
ここで専門用語を整理しておきましょう。「免除制度」とは所得が低く納付が著しく困難な場合に支払いを免れる仕組みであり、「猶予制度」は学生や若年層を対象に一定期間支払いを待ってもらう仕組みを指します。どちらも一見助け船のように見えますが、実はこれらを利用した期間については、将来の受給額が計算上減額されてしまうという大きな落とし穴があるのです。
「追納」の誤解が招く老後のリスクと今後の課題
筆者の調査では、ショッキングな事実が判明しました。免除や猶予を受けても、後で「追納(過去に免除された保険料を後日収めること)」をしなくて良いと勘違いしている人が非常に多いのです。この「年金リテラシー(年金制度を正しく理解し活用する能力)」の欠如は、将来の日本において格差をさらに拡大させる火種になりかねないと私は危惧しています。
制度の周知を徹底することはもちろん大切ですが、もはや「個人の努力」だけで解決できる段階を過ぎているようにも感じられます。例えば、経済的な理由で免除が常態化しているケースに対しては、受給額の減額幅を緩和するような新しい救済策を検討する時期に来ているはずです。制度の維持と国民の生活防衛、この両立こそが今求められている最大のテーマです。
2019年10月17日現在、私たちは老後の安心を次世代にどう引き継ぐかという分岐点に立っています。まずはご自身の納付状況を正しく把握し、将来の自分を守るための知識を蓄えることから始めてみてはいかがでしょうか。今できる一歩が、数十年後の自分を救う大きな力になるはずです。
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