2019年10月12日から13日にかけて日本列島を襲った記録的な台風19号は、各地に甚大な爪痕を残しました。福島県いわき市では河川の氾濫により街が茶色の濁流に飲み込まれ、多くの住民が孤立するという緊迫した状況が続いています。そんな中、救助を待つ人々とその家族にさらなる悲劇が襲いました。
2019年10月13日の午前10時ごろ、いわき市内で孤立していた77歳の女性を救助しようとした東京消防庁のヘリコプター「はくちょう」において、あってはならない事故が発生したのです。救助作業中に女性が約40メートルの高さから落下し、搬送先の病院で死亡が確認されました。
このショッキングなニュースに対し、SNS上では「助かるはずの命だったのに悲しすぎる」「過酷な現場とはいえ、手順のミスは防げなかったのか」といった悲痛な声や、救助隊への厳しい指摘が相次いでいます。未曾有の災害下で、人命を守るはずの砦が揺らいだ瞬間でした。
救助の命綱「ホイスト救助」で起きた痛恨のフック付け忘れ
東京消防庁は2019年10月13日午後に記者会見を開き、清水洋文次長が「手順を誤り、申し訳ありませんでした」と深く頭を下げました。事故の原因は、女性を吊り上げる際に必要な救助装置のフックを、ロープに連結し忘れたという初歩的かつ致命的なミスでした。
当時行われていたのは「ホイスト救助」という手法です。これは、ヘリに搭載された小型の巻上げ機(ホイスト)を使い、袋状の救助装置に収容した人を隊員が抱きかかえながら吊り上げる方式を指します。本来、機内に引き入れるまで強固に固定されているはずの装置が、連結されないまま宙に浮いていたことになります。
現場は当時50センチほど浸水しており、足場の悪い玄関先で作業が進められていました。通常は救助対象者を座らせてからフックを装着しますが、今回は水没を避けるために隊員が女性を抱えたまま、別の隊員が装着を担うというイレギュラーな状況だったようです。
救助に当たっていたのは、32歳の男性隊員2名でした。彼らは航空隊で1年半から2年半の経験を積んだ中堅層でしたが、極限状態の災害現場において、ダブルチェックの機能が十分に働かなかった可能性は否定できません。
私個人の見解としては、隊員たちの疲労や焦燥感は想像を絶するものだったと推察します。しかし、一つひとつの手順が文字通り「命」に直結する救助現場において、安全確認の省略は決して許されることではありません。再発防止には、個人の責任に留めず、組織としての確認体制を根本から見直すことが求められるでしょう。
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