「キャベジンコーワ」でお馴染みの興和が、宿泊業界に新たな風を吹き込んでいます。名古屋を拠点とする同社は、新ブランド「エスパシオ」を掲げ、世界屈指のリゾート地であるハワイで高級ホテル事業の第一歩を踏み出しました。2019年9月7日にオープンしたこの施設は、なんと12階建てに対してわずか9室という、究極のプライベート空間を実現しています。
1泊5000ドル、日本円にして約54万円からという破格の宿泊料金は、まさに世界の富裕層をターゲットにした戦略の表れと言えるでしょう。SNS上では「あの興和がハワイに?」「1泊50万円のサービスが気になる」といった驚きの声が広がっています。単なるチェーン展開を目指すのではなく、唯一無二の価値を提供するという三輪芳弘社長の強いこだわりが、この数字に凝縮されているようです。
名古屋の老舗が生まれ変わる!2027年を見据えた壮大な再開発
ハワイでの挑戦は、実は地元・名古屋での事業拡大に向けた布石でもあります。2027年に予定されているリニア中央新幹線の開業を控え、名古屋市内では海外からのVIPを迎え入れるための「迎賓館」としての機能が求められています。そこで興和は、名門「ホテルナゴヤキャッスル」を2020年末で一旦休止し、数年をかけて全面的な建て替えを行うという大胆な決断を下しました。
現在の195室ある客室を大幅に絞り込み、広々としたスイートルームを中心とした構成へ刷新する計画です。ここで注目したいのが「インバウンド」需要への対応です。これは、海外から日本を訪れる旅行者のことを指し、特に消費額の大きい富裕層を呼び込むことが地域経済の活性化には欠かせません。行政側もこの動きを後押ししており、愛知県と名古屋市は条件を満たす高級ホテルに対し、最大20億円の補助金を用意しています。
一方で、1936年創業の歴史を誇る「名古屋観光ホテル」も、2023年を目途に大規模なリニューアルを敢行します。こちらは営業を継続しながら、客室の面積を拡大し、ラウンジや飲食店を現代的なラグジュアリー空間へとアップデートさせる予定です。皇室や国賓に愛されてきた伝統を守りつつ、最新のニーズに応える進化を遂げる姿には、編集部としても伝統と革新の融合を感じずにはいられません。
医薬品メーカーが挑む「空間」ビジネスの可能性と課題
興和の2020年3月期の業績予想は、連結売上高が4400億円、純利益は前期の3.6倍となる70億円に達する見込みです。主力である医薬品や卸売事業が収益の9割を支える中で、ホテル事業への投資は一見、異業種への冒険のようにも映ります。しかし、ブランド名の「エスパシオ(スペイン語で空間)」が示す通り、彼らは単なる宿泊場所ではなく、極上の「体験」を売ろうとしているのです。
名古屋中心部では、老舗百貨店「丸栄」の跡地再開発も進行しており、2020年3月までには解体工事が完了する予定です。医薬品から光学機器、そして不動産・ホテルまで。多角化を進める同社にとって、限られた経営資源をいかに効率よく配分し、相乗効果を生み出すかが今後の鍵となるでしょう。名古屋が「素通りされる街」から「目的地」へと変わる日を、興和の挑戦が手繰り寄せているのかもしれません。
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