青森県十和田市が誇る華やかな「桜流鏑馬」を運営する十和田乗馬倶楽部が、2020年6月にドイツで開催される世界馬術フェスティバルでデモンストレーション公演を行うことを発表しました。この「スポーツ流鏑馬」とは、古来の神事を競技として再定義した日本独自の乗馬スポーツです。伝統的な和装に身を包み、日本在来馬を操りながら、疾走する馬上から的に向かって矢を射る姿は、まさに動く芸術と言えるでしょう。
「スポーツ流鏑馬」の最大の特徴は、単に的に当てるだけでなく、馬の速度をコントロールする技術が求められる点にあります。一般的に「流鏑馬」と聞くと、猛スピードで駆け抜けるイメージが強いですが、この競技では規定時間内に収める正確性が評価の対象となります。SNS上でも「和装の美しさと迫力が凄まじい」「日本の伝統がスポーツとして進化しているのは面白い」といった声が上がっており、国内外でその注目度は急速に高まっています。
世界最高峰の舞台「アーヘン」での挑戦
2020年6月のドイツ公演は、馬術の聖地として知られるアーヘンで実施される予定です。十和田乗馬倶楽部からは3頭の馬と、専門スタッフを含む約10名の精鋭チームが海を渡ります。2018年にはアメリカのアトランタでも公演を成功させており、今回が2度目の海外遠征となります。欧米の成熟した乗馬文化の中で、日本の伝統馬術がどのような化学反応を起こすのか、今から期待に胸が膨らみますね。
十和田乗馬倶楽部代表の上村鮎子さんは、競技を通じて日本の伝統的な馬事文化を世界に発信したいと熱く語っています。国内での普及活動にも余念がなく、2019年11月2日に東京都世田谷区で予定されていた公演は台風の影響で延期となりましたが、「より多くの人に知ってもらいたい」という情熱は衰えていません。こうした地道な発信が、遠く離れた異国の地での「日本へ行ってみたい」という動機に繋がるはずです。
特筆すべきは、初心者の参入を後押しする環境作りです。今夏開催された新人戦では、馬文化を応援するアイドルグループ「桜花のキセキ」の星野菜々さんが、わずか10日間の猛練習を経て3位入賞を果たしました。クラウドファンディングで合宿費用を募り、夢を実現させた彼女の姿は、多くのファンに勇気を与えています。専門用語である「和種馬(わしゅめ)」、つまり日本固有の血統を持つ馬たちの力強くも優しい背中が、新しい世代を惹きつけています。
「乗馬のまち」十和田が描く地方創生の未来
十和田市は古くから軍馬の産地として知られ、「乗馬のまち」としてのアイデンティティを大切にしてきました。2004年に十和田市馬事公苑が整備されて以来、利用者は右肩上がりで、地域の観光資源として確固たる地位を築いています。また、北里大学獣医学部がキャンパスを構えていることも強みであり、学生たちが運営をサポートするなど、産学官が連携して馬関連産業を支える理想的な形が出来上がっています。
編集者の視点から見ても、スポーツ流鏑馬は単なるエンターテインメントに留まらない、強力なコンテンツだと感じます。十和田奥入瀬観光機構の工藤彰さんが指摘するように、全国から選手や観客が集まることで生まれる宿泊・飲食への波及効果は絶大です。伝統を「守る」だけでなく、スポーツとして「アップデート」し、海外へ「攻める」十和田の姿勢は、これからの地方創生における素晴らしいモデルケースになるでしょう。
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