2019年11月03日、秋の深まりとともに清々しいニュースが届きました。令和初となる秋の叙勲受章者が発表され、エネルギー業界の発展に多大な貢献を果たした元出光興産社長の天坊昭彦氏(79歳)が、栄えある「旭日重光章(きょくじつじゅうこうしょう)」を受章することが決定したのです。この勲章は、国家や公共に対して顕著な功績を挙げた人物に授与される極めて名誉あるものであり、天坊氏の長年にわたる献身的な歩みが最高形で評価されたといえるでしょう。
天坊氏といえば、創業家以外の出身者として初めて出光興産の経営トップに就任し、同社の歴史に新たな風を吹き込んだ「変革のリーダー」として知られています。かつての出光は非上場を貫く独自の経営スタイルで有名でしたが、天坊氏は企業の透明性を高めるために財務体質の抜本的な改善を断行しました。その結果、2006年10月24日には東京証券取引所への株式上場という歴史的な転換を実現させ、近代的なエネルギー企業としての基盤を強固なものにしたのです。
東日本大震災の最前線で守り抜いた「エネルギーの灯」
SNS上では今回の受章に対し、「震災の時にガソリンスタンドに並んだ記憶があるけれど、あの裏で支えてくれた人がいたんだ」「民間から国の安全保障を支える姿勢が素晴らしい」といった、当時の苦労を労う声が多く寄せられています。天坊氏が2008年から2012年にかけて石油連盟の会長を務めていた際、日本は2011年03月11日に発生した東日本大震災という未曾有の危機に直面しました。被災地へ燃料を届けるため、氏は官民一体となった陣頭指揮を執り続けたのです。
特筆すべきは、国家備蓄の放出や緊急輸入の決定など、一刻を争う事態における迅速な決断力でした。石油は単なる燃料ではなく、救急車を動かし、暖を取り、命をつなぐための「社会基盤(インフラ)」そのものです。天坊氏は当時を振り返り、緊急時における石油の対応力が再認識されたことで、国民のエネルギーに対する関心がかつてないほど高まったと述べています。平時には意識されにくい「当たり前」を守ることの難しさと尊さを、私たちは氏の行動から学ぶべきではないでしょうか。
2019年06月に出光興産の顧問を退任した天坊氏は、今回の受章を「身に余る光栄」と謙虚に受け止めています。氏は、エネルギーの安定供給こそが国民生活の根幹であり、これを維持することは「国家の安全保障」に直結する重要な政策であると力説しています。地政学的なリスクによって世界のエネルギー情勢が絶えず揺れ動く現代において、民間企業がいかにして国の守り手となるかという視点は、これからの日本にとっても欠かせない指針となるはずです。
今後のエネルギーの在り方について天坊氏は、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」、そして地域ごとに電力を供給する「分散型電源」の活用を提言しています。これは自然環境との調和を目指す新しい時代の形であり、単なる経済効率を超えた大局的な視点でのエネルギー政策の確立を願って止みません。一人の経営者が示した情熱と責任感は、これからの未来を照らす確かな光として、次世代へと引き継がれていくことでしょう。
コメント