医療の世界に、心疾患治療を根底から変えるかもしれない希望の光が差し込みました。京都大学の尾野亘准教授や井手裕也特定助教らの研究グループが、2019年11月4日までに発表した研究成果によれば、開発中の新薬が心筋梗塞による細胞の死を劇的に抑制することが判明したのです。
今回注目されているのは、垣塚彰教授が生み出した「KUS121」という薬剤で、心筋梗塞が発生した際の細胞壊死を約半分にまで抑え込む力を持っています。この発見により、将来的には心筋梗塞を原因とする死亡率や、長期にわたる入院リスクを大幅に低減できると期待されているのでしょう。
そもそも心筋梗塞とは、心臓に酸素を運ぶ「冠動脈」が血栓などで詰まり、心筋細胞が窒息状態に陥って腐食してしまう恐ろしい病気です。日本では年間で約7万5千人もの方が急性心筋梗塞を発症しており、まさに現代社会における国民病の一つと言っても過言ではありません。
現在の標準的な治療としては、詰まった血管を物理的に広げる「カテーテル治療」が広く普及しています。しかし、実は血流が再開した後も課題が残っているのです。血液が再び流れ始めた際、細胞のエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」が急激に減少してしまい、細胞が力尽きてしまう現象が大きな壁となっていました。
そこで研究チームは、細胞内でATPを大量に消費してしまう「VCP」というタンパク質の動きに着目したのです。新薬のKUS121はこのVCPの働きを適度に抑えることで、細胞のエネルギー枯渇を防ぐ画期的な仕組みを持っています。いわば、細胞の体力を温存させる「省エネスイッチ」のような役割を果たしてくれるのですね。
実際のブタを用いた実験でも、血管を広げた直後にこの薬剤を投与した個体は、何もしなかった個体に比べて壊死の範囲が明らかに狭まったというデータが得られています。SNS上でも「カテーテル後のダメージまで防げるのは凄い」「一日も早い実用化を」といった、医療の進歩に対する驚きと期待の声が数多く寄せられているようです。
私個人の意見としても、最先端の薬学が「エネルギーの制御」という根源的なアプローチで心臓を守る点に非常に感銘を受けました。今後は人間を対象とした医師主導治験の早期開始が計画されており、この技術が救急現場のスタンダードになる日はそう遠くないのかもしれません。
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