インド発の黒船が、日本の宿泊業界を塗り替えようとしています。ソフトバンクグループからの強力なバックアップを受ける格安ホテル運営会社「OYO(オヨ)ホテルズアンドホームズ」が、驚異的なスピードで日本国内の勢力を拡大させているのです。彼らが掲げる目標は、2020年3月までに国内最大級となる7万5000室の展開。これは、現在トップを走るアパグループをも凌駕する、極めて野心的な数字と言えるでしょう。
2019年11月23日現在の状況を紐解くと、10月末時点での客室数は約5200室に留まっています。しかし、12月からは月間1000室未満だったペースを一気に1万室へと加速させる計画です。営業スタッフを倍増させ、既存のホテルを次々と自社ブランドへ塗り替えていく手法は、まさに「破壊的」な成長スピードを感じさせます。SNS上でも「近所に突然OYOの看板が増えた」「格安で驚いた」といった声が散見され、その存在感は急速に高まっています。
AIが弾き出す「ダイナミックプライシング」の衝撃
OYOの最大の武器は、ITを駆使した最先端の価格戦略にあります。彼らは「ダイナミックプライシング」と呼ばれる、人工知能(AI)を用いた変動料金制を導入しています。これは、周辺のイベント状況や天候、過去の予約データから瞬時に最適な価格を算出する技術です。例えば、東京の西日暮里にある拠点を調査したところ、競合他社が2万円を超える設定をする日でも、OYOなら1万円前半で宿泊できるケースもあり、その圧倒的なコストパフォーマンスが注目されています。
しかし、この急速な拡大路線には懸念の声も少なくありません。不動産サービス大手の予測によれば、2021年にかけて東京では約1万2000室もの供給過剰が懸念されています。単に宿泊費が安いというだけでは生き残れない、熾烈なサバイバル時代が到来しているのです。私個人の見解としては、ITによる効率化は業界の進化に不可欠ですが、日本独自の「おもてなし」という質の部分が、このスピード経営の中で置き去りにされないかが大きな焦点になると考えています。
急成長の裏で露呈するパートナーとの摩擦
光が強ければ影も濃くなるように、急拡大の歪みも表面化し始めています。OYOと契約を結んだオーナーの間では、当初約束されていた「最低収入保証」を巡るトラブルが噴出しているようです。あるオーナーは、契約からわずか2カ月で保証額の7割削減を求められ、最終的に保証がゼロになるという事態に直面しています。ITによる合理化を優先するあまり、現場のパートナーとの信頼関係を損ねている現状は、持続可能なビジネスモデルとして大きな疑問符が付きます。
2019年は世界的にスタートアップへの評価が厳しくなっている時期でもあります。ソフトバンク・ビジョン・ファンドが投資する他社の不振もあり、OYOの日本戦略が成功するかどうかは、投資家にとっても試金石となるでしょう。単なる数字の積み上げではなく、宿泊者とオーナーの双方が納得できる価値をどう提供していくのか。2020年3月の目標達成に向けた同社の手腕に、業界全体の熱い視線が注がれています。
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