もし、政府から毎月決まった金額があなたの口座に振り込まれるとしたら、生活はどう変わるでしょうか。2019年11月23日、世界中で関心を集めている「ベーシックインカム(BI)」をテーマにした注目の書籍が登場しました。アニー・ローリー氏による本書は、年齢や職業に関わらず、すべての国民に最低限の生活を営むための現金を一律で給付するという、一見すると大胆不敵な政策の真実に迫っています。
現在、社会には貧富の格差が深刻化し、どれほど懸命に働いても貧困の連鎖から抜け出せない人々が増加しています。こうした閉塞感を打破する究極の処方箋として、BIは脚光を浴びているのです。SNS上でも「働かなくても生きていけるなら夢を追いかけたい」という期待の声がある一方で、「人間が怠惰になるのではないか」という懸念が入り混じり、活発な議論が巻き起こっています。
AI時代の生存戦略としての所得保障
なぜ今、これほどまでにBIが叫ばれているのでしょうか。その背景には、人工知能(AI)の急速な進化があります。将来的にロボットが人間の仕事を代替する時代が到来すれば、多くの人々が職を失うリスクを抱えるでしょう。本書では、仕事が消滅しかねない未来への備えとして、BIが必要不可欠であるという鋭い視点が提示されています。社会の仕組みが根底から変わる過渡期に、私たちは立たされているのです。
BIの優れた点は、受給者にレッテルを貼らない公平性にあります。従来の福祉制度では、受給者が「支援を受ける人」として差別的な視線にさらされることがありました。しかし、全員に等しく配る仕組みであれば、そうした心理的障壁は解消されます。人間としての尊厳を保ちながら、本来持っている能力を存分に発揮するための「安心の土台」を築ける点は、この政策の大きな魅力と言えるはずです。
著者は先進国から途上国まで世界各地を巡り、不完全ながらも実施されているBIの試行例を克明にレポートしています。失敗に終わるケースもあれば、目に見えて人々の表情が明るくなり、地域経済が活性化した成功例も紹介されており、現場のリアルな息遣いが伝わってきます。机上の空論ではなく、現実の社会で何が起きているのかを知ることは、私たちの未来を考える上で非常に重要です。
財源の壁を越えた先に待つ豊かな社会
もちろん、バラ色の未来ばかりではありません。最大の障壁は、膨大な給付金をどこから捻出するかという財源の問題です。残念ながら本書でも完全な解決策は示されていませんが、既存の複雑な社会保障制度を整理・統合することで、新たな道が開ける可能性を示唆しています。私個人としては、単なるバラマキと批判するのではなく、富の再分配のあり方を根本から見直す好機と捉えるべきだと考えます。
2019年11月23日現在の情勢を見渡すと、たとえBIという形ではなくとも、何らかの強固な所得保障が必要であることは明白でしょう。変化の激しい現代を生き抜くために、私たちは「お金」と「労働」、そして「幸福」の定義を再構築しなければなりません。本書は、そのための確かな指針を与えてくれる一冊です。これからの時代をどう生きるべきか、読者の皆さんと共に考えていきたいと切に願います。
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