私たちの生活に欠かせないスマートフォンや電気自動車の未来を塗り替える、驚きの研究成果が発表されました。2019年11月23日、山形大学の森下正典産学連携准教授と宇部興産の共同研究チームが、リチウムイオン電池の容量を最大で2倍にまで引き上げる画期的な実用化技術を開発したのです。このニュースはネット上でも「ついに電池持ちの悩みが解消されるのか」「日本の材料技術の底力を見た」と、大きな期待を込めて拡散されています。
今回の技術の鍵を握るのは、電池のマイナス極である「負極」に採用されたシリコンという素材です。リチウムイオン電池は、リチウムイオンが正極と負極の間を行き来することで充放電を行います。一般的に負極には黒鉛(グラファイト)が使われていますが、シリコンは理論上、その5倍から10倍もの電気を蓄えるポテンシャルを秘めています。しかし、充電時にスポンジが水を吸うように大きく膨らんでしまう性質があり、これまでは実用化が困難とされてきました。
シリコンは充放電を繰り返すと激しく膨張と収縮を繰り返し、やがて電極のシートから粒子が剥がれ落ちて電池が壊れてしまいます。この致命的な弱点を克服したのが、宇部興産が培ってきた「ポリイミド樹脂」の技術です。ポリイミドとは、人工衛星の絶縁材などにも使われるほど熱や薬品に強い、極めて頑丈なプラスチックの一種です。今回、環境に優しい水系の耐熱ポリイミドを開発し、これをシリコンに混ぜ合わせることで、膨張による崩壊を物理的に抑え込むことに成功したのです。
ドローンから電気自動車まで!10年の絆が結実した未来のエネルギー
このプロジェクトは、森下准教授が産業技術総合研究所(産総研)に在籍していた時代から始まり、実に10年以上の歳月をかけて研究が続けられてきました。長年の地道な努力が実を結び、従来の電池と比べて使用時間を1.3倍から2倍にまで延ばせる見通しが立ったことは、まさに技術革新と呼ぶにふさわしい成果でしょう。今後はまずドローンに搭載して飛行時間の延長を確認する実証実験を行い、2021年ごろの製品化を目指すとされています。
筆者の視点としては、この技術が早期に普及することで、日本の製造業が再び世界のエネルギー市場で主導権を握るきっかけになると確信しています。特に航続距離が課題となっている電気自動車(EV)において、電池容量の倍増はゲームチェンジャーとなり得る要素です。サイズをより軽く、そして薄くできる利点は、ウェアラブル端末やロボット産業など、あらゆる分野に恩恵をもたらすはずです。研究チームが描く「2年以内の実用化」というスピード感ある展開に、今後も目が離せません。
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