2019年11月29日、経済産業省から発表された10月の鉱工業生産指数は、私たちの生活を取り巻く経済環境が一段と厳しさを増していることを浮き彫りにしました。前月と比較して4.2%もの低下を記録したこの数字は、およそ1年9カ月ぶりの大幅な落ち込みとなります。
SNS上では「給料は上がらないのに物価だけ高くなる」「増税の影響が目に見えて出てきた」といった、将来への不安を吐露する声が相次いでいます。今回の下落幅は、前回の増税直後である2014年4月と同水準であり、景気の現状がいかに深刻であるかを物語っていると言えるでしょう。
生産活動を直撃した「負の三連鎖」とは
今回の生産低下を招いた要因は、大きく分けて三つ存在します。まず一つ目は、2019年10月1日の消費税率引き上げに伴う「駆け込み需要の反動」です。増税前に家電や化粧品などを買いだめする動きが見られましたが、その反動で10月以降の需要が急激に冷え込みました。
二つ目は、日本列島を襲った「台風19号」による自然災害の影響です。多くの工場で操業停止を余儀なくされたほか、物流網の寸断によって部品の調達が困難になり、自動車などの主要産業で生産が滞りました。これは予期せぬ外部要因として、経済に大きな爪痕を残しています。
そして三つ目が、長引く「米中貿易摩擦」に端を発する外需の縮小です。世界的に企業の設備投資が控えられており、日本が得意とする工作機械などの受注が大幅に減っています。編集者の視点で見れば、内憂外患の状況が重なった極めて不運なタイミングだったと感じざるを得ません。
鉱工業生産指数が示す「景気の基調」と現場の悲鳴
ここで専門用語を解説しましょう。「鉱工業生産指数」とは、製造業や鉱業の活動状況を数値化したもので、いわば「日本経済の健康診断書」のような指標です。経済産業省はこの指数を受け、基調判断を「弱含み」へと下方修正しました。これは景気が停滞し始めていることを公式に認めた形です。
実際の製造現場からも悲痛な声が聞こえてきます。工作機械大手のオークマでは、工場の稼働率が2割ほど低下する見通しを示しており、雇用市場にも影を落としています。2019年10月の新規求人数は3カ月連続で減少し、特に製造業での求人減が顕著となっているのが現状です。
5Gと東京五輪が「希望の光」となるか
暗いニュースが続きますが、2020年に向けた明るい兆しも皆無ではありません。次世代通信規格「5G」の普及に向けた基地局投資や、新型スマートフォンの開発活発化により、半導体市場には底打ち感が出ています。いわゆる「半導体サイクル」が上向きに転じれば、輸出の回復が期待できます。
さらに、2020年の東京五輪に向けた新型テレビの需要増なども、生産を押し上げる要因となるでしょう。政府も大規模な経済対策を検討しており、財政出動によって景気を下支えする構えを見せています。ただし、これらがどれほど実効性を持つのかについては、専門家の間でも意見が分かれています。
私個人の意見としては、一時的な補助金や対策だけでなく、消費者が安心して財布の紐を緩められるような中長期的な安心感の醸成が必要だと考えます。増税と災害という困難を乗り越え、再び力強い日本経済の鼓動が戻ることを切に願わずにはいられません。
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