米中貿易摩擦の緊張が極限まで高まるなか、米IT大手のアップルが絶体絶命の危機を乗り越えるべく、極めて戦略的な動きを見せています。2019年11月20日、同社のティム・クック最高経営責任者は、テキサス州オースティンにある自社製品の製造拠点を訪れたトランプ大統領を自ら出迎えました。これは単なる工場視察ではなく、目前に迫った対中制裁関税を回避するための、国家を巻き込んだ壮大なロビー活動の一環と言えるでしょう。
現在、トランプ政権は中国からの輸入品に対して高い税金を課す「追加関税」の拡大を計画しており、その対象には世界中で愛されるiPhoneも含まれています。もし2019年12月15日に予定通り発動されれば、製品価格の上昇や収益の悪化は避けられません。この関税とは、輸入時にかかる税金のことですが、アップルのように生産を中国に依存する企業にとっては、ビジネスモデルの根幹を揺るがしかねない死活問題なのです。
雇用創出を武器にした懐柔策とSNSの冷ややかな視線
クック氏は今回の視察で、同社が米国内でいかに多くの雇用を生み出し、経済に貢献しているかを熱烈にアピールしました。製造業の国内回帰を掲げる大統領の自尊心をくすぐることで、例外的に関税を免除してもらおうという狙いが透けて見えます。最高級パソコン「Mac Pro」の組み立てを米国で行う姿勢を強調したのは、まさにトランプ氏の政策に同調していることを示す、高度な政治的パフォーマンスに他なりません。
こうした一連の動きに対し、SNS上では「クック氏の立ち回りは見事だが、ここまで大統領に寄り添う必要があるのか」といった驚きの声が上がっています。また「関税の影響でiPhoneが値上げされるのは困る」というユーザーの切実な不安と、「政治と企業の癒着が進んでいるのではないか」という批判的な投稿が混ざり合い、議論は紛糾しています。巨大IT企業であっても、一国の政策にこれほどまでに翻弄される姿は、多くの人々に衝撃を与えました。
編集者の視点から言えば、今回のアップルの対応は企業防衛として極めて合理的ですが、同時に危うさも孕んでいます。特定の政治リーダーに接近して便宜を図ってもらう手法は、短期的には成功しても、ブランドの公正さを損なうリスクがあるからです。しかし、グローバル経済の分断が進む今の時代、純粋な経済活動だけで利益を守ることは不可能なのかもしれません。アップルが選んだこの「政治的決断」が、12月の関税発動回避に繋がるのか、世界中が固唾を呑んで見守っています。
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