2019年6月1日、横浜市の金沢シーサイドライン新杉田駅で発生した列車逆走事故は、多くの人々に衝撃を与えました。この事故を起こした「新交通システム」とは、無人の自動運転で、高架などの専用軌道を走行する特殊な交通機関のことです。鉄道とバスの中間的な役割を担っており、都市部の交通手段として注目されています。
このシステムは、従来の鉄製の車輪ではなく、ゴムタイヤの車輪を備えているのが大きな特徴です。この設計によって、鉄道車両では曲がりきれないような急なカーブでもスムーズに走行でき、振動や騒音も少ないため、都市部の住宅密集地などにも設置しやすいというメリットがあるのです。また、車両などの建設コストや運行に関わる人件費を抑えられる点も、普及の大きな後押しとなっています。
新交通システムの導入は、1981年に神戸新交通のポートライナーが開業して以来、全国各地で進められてきました。事故を起こしたシーサイドラインは、量産化を見据えて規格を標準化した車両の第1号として1989年に営業を開始しました。同様の自動運転方式は、東京都の新橋から豊洲間を結ぶ「ゆりかもめ」や、東京都交通局の「日暮里・舎人ライナー」など、多くの主要都市で採用されています。さらに、JR東日本でさえも、山手線への自動運転方式の導入を検討しており、新型車両を用いた走行試験を始めている状況です。このように、新交通システムは私たちの日常的な移動手段として、その存在感を増していると言えるでしょう。
今回事故を起こしたシーサイドラインの車両には、「自動列車運転装置」(ATO)と呼ばれる、路線の運行データを記憶した装置が搭載されています。このATOによって、列車はコンピューター制御で運行されているのです。関西大学の安部誠治教授(交通政策論)によると、車両の出発判断は、指令所にある運行管理コンピューターが自動で行い、指令所の担当者は運行状況を目視で確認しているということです。日本大学の綱島均教授(鉄道工学)は、始発駅では通常、車両側のシステムが進行方向の切り替えを指令所に伝え、出発許可を得るという流れを説明しており、今回の逆走事故について、「車両が出発していることから許可は出たと考えられるが、逆走しているということは、何らかの問題で車両のモーターの推進方向が変わらなかったのではないか」と推測しています。
この事故のニュースが報じられると、SNS上では「無人運転は怖い」「信頼性が揺らぐ」「原因がはっきりしないと不安」といった声が多く上がり、新交通システムの安全性に対する懸念が広がっています。特に、このシステムが多数の路線で採用されていることから、システム全体の安全神話が崩れかねないという強い危機感が共有されているようです。自動運転列車による事故は過去にも発生しており、1993年には大阪市営(現在の大阪メトロ)ニュートラム南港ポートタウン線が減速せずに駅の車止めに衝突し、200人を超える負傷者を出した事故や、2006年にはゆりかもめの車輪が脱落して立ち往生する事故などが起きています。
こうした過去の事例や今回の事故を踏まえると、安全性の確保は最優先の課題です。関西大学の安部教授は、「同様のシステムを取り入れる例は多く、今回の事故がシステムの構造的な欠陥によるものである可能性も捨てきれない」と警鐘を鳴らしており、「早期に原因を究明する必要がある」と強く指摘しています。私としても、多くの人々が利用する公共交通機関の信頼を守るため、関係当局には徹底した調査と、その結果に基づく迅速で透明性のある対策を望みたいと考えます。低コストで利便性が高い新交通システムの普及は、現代社会において不可欠ですが、安全が担保されてこそ、その真価が発揮されるのではないでしょうか。
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