2019年6月1日に横浜市の新交通システム「シーサイドライン」で発生した逆走事故は、多くの利用客に大きな影響を与えました。この事故は、自動運転の車両が終点の新杉田駅(横浜市磯子区)のホームで突然反対方向に走り出すという、極めて異例の事態でした。事故発生からわずか3日後の6月4日午前、運営会社の横浜シーサイドラインは、異例の手動運転による全区間(新杉田駅~金沢八景駅)での運行再開に踏み切ったのです。これは、自動運転の安全性を担保する自動列車運転装置(ATO)に異常がないかを確認中の状況で、人による操作での運行を選択するという迅速な決断でした。
今回の運行再開は、3日夜から4日朝にかけて行われた徹底した手動運転の試験走行と、国土交通省担当者の立ち会いのもと、運転士による操作状態であれば安全に問題ないと判断された結果です。三上章彦社長は4日午前の記者会見で、「代替バスでの輸送には限界があり、乗車までに相当な時間を要するなど、利用客に多大なご不便をおかけした」と述べ、早期再開の必要性を強調しました。運行は上下線とも約10分間隔となり、これは通常のダイヤの約65%に相当する本数でスタートしています。
私が編集者として今回の対応を見て感じるのは、利用客の生活を支える公共交通機関としての使命感と危機管理能力の高さです。自動運転というシステムの信頼が揺らぐ中、運行資格を持つ67名の従業員が定期的な訓練を積んでいたことが、手動運転という代替策を可能にしたと言えるでしょう。実際に運転を担うのは30名の運転士で、加速を緩やかにするなど、細心の安全配慮を行いながらワンマン運転を実施しています。
運行再開初日の4日、並木中央駅(横浜市金沢区)では、運転士が運転席に座り、一つ一つ機器を指差し確認する厳格な作業が行われていました。駅員に見守られながら、静かにホームを出発する車両の姿は、安全への強い決意を感じさせるものでした。再開を待ちわびた利用客からは、並木中央駅近くに住む83歳の無職女性のように、「代行バスは普段の倍の時間がかかり大変だった。再開してほっとした。この線がないと出歩くのも難しい」といった安堵の声が上がっています。
一方で、66歳の男性会社員からは、「思っていたより早く再開して良かったが、事故原因が解明されていないままであり、安全には不安も残る」という懸念の声も聞かれます。横浜シーサイドラインや運輸安全委員会は、現在も事故の原因となった自動列車運転装置(ATO)などの運行制御システムに異常がなかったかを詳しく調査中です。同社は自動運転の全面再開の目途は立っていないとしており、今後は混雑状況を踏まえつつ運行本数を徐々に引き上げるとともに、朝夕のラッシュ時には引き続き代替バスの並行運行も検討していく方針です。
今回の事故は、AIが制御する自動運転システムに対する社会の期待と、乗り越えるべき課題を浮き彫りにしました。人によるチェックを介さない「新交通システム」の安全性をどう確立していくのか、その検証は今まさに正念場を迎えていると言えるでしょう。TwitterなどのSNSでは、「シーサイドライン再開は嬉しいけど、原因がわからないのはちょっと怖い」「運転士さんの手動運転、お疲れ様です。人の方が安心できるというのも皮肉な話」といった、安堵と不安が入り混じる反響が多く見受けられます。今後の原因究明と、自動運転の信頼回復に向けた企業の取り組みに、引き続き注目が集まるでしょう。
コメント