2019年11月、日本のエネルギー市場は大きな転換点を迎えました。家庭用太陽光発電の固定価格買い取り制度、通称「FIT」の期間が順次終了し始める「卒FIT」がいよいよ現実のものとなったのです。これまで手厚い政策に守られてきた再生可能エネルギーですが、これからは自立した普及が求められるフェーズへと移行します。市場では、家庭で余った電力をいかに活用するかを巡り、国内外の企業による熱い火花が散り始めています。
この制度は2009年に開始され、当初の買い取り価格は1キロワット時あたり48円という破格の設定でした。しかし、10年の節目を迎えた2019年だけで約53万戸が期間を終え、その価格は大手電力会社の場合で7円から9円程度へと大幅に下落します。SNS上でも「売電価格が安すぎてショック」「これからは売るより自分で使う時代だ」といった声が相次いでおり、消費者の意識は「売電」から「自家消費」へと明確にシフトしています。
そこで今、熱烈な視線を集めているのが「家庭用蓄電池」です。これまで導入コストが200万円を超えることも珍しくなかったこの分野に、ついに強力な「黒船」が襲来しました。米国のテスラは2019年10月、家庭用蓄電池「パワーウォール」を2020年春に日本で発売すると発表したのです。ネット直販による99万円という驚きの低価格は、業界に激震走るニュースとなりました。
さらに、車載電池で世界トップを走る中国のCATLも2020年夏を目途に、日本市場へ低価格モデルを投入する構えを見せています。こうした海外勢の攻勢に対し、私は日本のものづくりの真価が問われる絶好の機会だと考えています。単なる価格競争ではなく、日本の住宅事情に即したきめ細やかなサービスや、長年培ってきた信頼性がどこまで対抗できるのか、まさに今が正念場と言えるでしょう。
国内勢も決して手をこまねいているわけではありません。シャープは2020年1月に、人工知能(AI)を駆使した新型蓄電池の投入を予定しています。これは、AIがパネルと電池を賢く制御し、電力効率を最大化する「スマートな暮らし」を提案するものです。また、京セラも長寿命を武器にした新製品を2020年1月に発売します。付加価値を追求する日本勢の戦略が、消費者にどう響くかが注目されます。
一方で、蓄電池を購入せずに売電を続けたい世帯に向けた「余剰電力の争奪戦」も加熱しています。東京ガスやJXTGエネルギーといったインフラ企業に加え、積水ハウスなどの住宅メーカーも独自の買い取りプランを打ち出しました。中には蓄電池とのセットで1キロワット時あたり14円から16円という高値を提示する例もあり、企業間のパートナーシップは今後ますます加速していくことでしょう。
日本政府は2030年に向けて、再生可能エネルギーの比率を現在の約15%から22〜24%まで引き上げる目標を掲げています。太陽光発電はその柱であり、卒FIT後の市場が健全に拡大できるかは、日本のエネルギー自給率を左右する重要な試金石となります。各社が提供するサービスが、単なるビジネスに留まらず、私たちの生活を豊かにするインフラとして定着することを切に願います。
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