2020年6月の施行が予定されている**「卸売市場法改正」は、生鮮食料品の流通を支える要である中央卸売市場の取引環境を大きく変えるものです。この法改正は取引の自由度を高める一方で、現場の事業者からは強い懸念の声が上がっていることが明らかになりました。名古屋市は2019年6月20日、市内の名古屋市中央卸売市場**の事業者を対象に行ったアンケート調査の結果を公表し、その内容が市場関係者の間で大きな波紋を広げています。
今回の調査は、同年2月に市内の3市場にある全246事業者を対象に実施され、約8割から有効な回答を得ています。そこで示された結果は極めて衝撃的で、法改正に伴う取引の自由化に対して「反対」と回答した事業者が**46.3%に達しました。これは「賛成」と答えた22.7%**を大幅に上回る数字であり、自由化に対する市場事業者の根強い不安感が浮き彫りになったと言えるでしょう。
卸売市場法改正がもたらす取引環境の変化
この議論の核心となる**「卸売市場法改正」について、改めてご説明させていただきます。この法改正は、市場を運営する行政の関与を減らし、市場外取引(市場を通さない取引)や商圏を超えた販売といった、これまでは規制されていた取引の自由度を高めることが主な目的です。従来の中央卸売市場は、行政が認定し、農産物や水産物などの生鮮食料品を公正な価格で安定的に供給するための社会インフラ(公共性の高い流通拠点)**としての役割を担ってきました。
多くの規制が撤廃され、取引が自由になることで、その公共性が損なわれるのではないかという懸念が市場関係者から強く出ています。今回の調査では、規制の内容を「知っている」「なんとなく知っている」と答えた事業者が65%強に上っており、多くの事業者が法改正の持つ意味を理解した上で、不安を示していることがわかります。流通の効率化は必要ですが、食の安定供給というインフラとしての機能が弱体化することは、消費者の視点からも避けなければなりません。
事業者たちが自由化によって生じる具体的な変化として、懸念を表明する声が目立っています。最も多く挙げられたのは「顧客の取り合いが激しくなる」(49.3%)という点でした。次いで、「市場への商品流入が減少」(38.4%)といった、市場全体の活力が失われることへの危機感が示されています。もちろん、「販路を拡大できる」と前向きな見方をする事業者も34.5%存在し、新たなビジネスチャンスを模索する動きもあることが推察されます。
市場の現状とSNSで広がる公共性への懸念
自由化への反対意見が過半数に迫る背景には、市場を取り巻く厳しい現状があります。過去2〜3年の営業活動について尋ねたところ、5割強の事業者が「縮小」または「やや縮小」していると回答しました。すでに経営環境が厳しさを増している中、今回の規制緩和がさらなる競争激化を招き、体力の弱い事業者が廃業に追い込まれるのではないかという不安は、極めて切実なものでしょう。
この法改正に対する不安は、SNSやインターネット上でも広く議論を呼んでいました。当時の世論としては、特に**「中央卸売市場の公共性が損なわれ、社会インフラとしての機能が弱まるのではないか」という点が強く指摘されていたのです。また、市場が衰退すれば、仲卸業者の「目利き」**や豊富な品揃えに頼っている地域の飲食店や小売店の仕入れにも大きな影響が及ぶことへの懸念も多く、法改正が食生活全体に関わる問題として捉えられているのが実情です。
市場が全国的な環境変化に対応し、競争力を高めていくことは避けて通れない課題です。今回の調査でも、今後の経営方針については**55.7%**が「現在の取引と新規の取引の両方を重視する」と回答しており、新しい販路や取引の開拓に意欲を見せています。名古屋市は、この調査結果を踏まえ、月内に各市場の事業者へのヒアリングを順次実施し、現場の意見を詳細に把握する方針です。
流通の効率化や販路の多様化は、時代の要請として歓迎すべきでしょう。しかし、卸売市場の持つ最大の価値は、単なる価格競争ではなく、「安心・安全な食の安定供給」という公共性にあります。私は、この自由化の波を単なる競争激化で終わらせるのではなく、市場が持つ「目利き」の技術や品質管理の徹底といった強みを、新たなビジネス環境の中でいかに維持・強化していくかに、行政と事業者双方で力を尽くすべきだと考えます。今回の名古屋での調査結果は、全国の卸売市場関係者に対し、市場の未来を問いかける重い警鐘となっていると言えるでしょう。
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