「大廃業時代」に立ち向かう!地域金融機関の熱い挑戦:事業承継・M&A支援で中小企業を救う人材育成戦略

今、日本の中小企業は、経営者の高齢化に伴う「大廃業時代」という深刻な課題に直面しています。地域経済の担い手であり、地域金融機関にとって最大の顧客である中小企業の存続は、まさに死活問題と言えるでしょう。この危機を乗り越え、円滑な事業承継を支援するため、全国の地方銀行や信用金庫が、専門人材の育成と組織体制の強化を急ピッチで進めているのです。

事業承継は、企業の業態や経営者のご要望によって、取るべき解決策が千差万別となる非常に専門性の高い分野です。経営コンサルティングから、企業同士の合併・買収を意味するM&A(エムアンドエー:Merger and Acquisition)まで、幅広い知識と対応力が求められます。そのため、いかに専門スキルを持つ行員を育てられるかが、地域金融機関の今後の競争力を左右する鍵となっています。

東海地方の主要な地方銀行も、人材育成に本腰を入れています。例えば愛知銀行は、2019年7月から、副支店長や渉外担当者を対象に、事業承継に関する税務や法務などの知識を問う外部試験「事業承継・M&Aエキスパート試験」の受験を強く促しています。現在約220人の合格者を、2022年3月末までに全行員の約3分の1にあたる500人以上へと大幅に増やす計画です。名古屋銀行も2018年度から、この試験を支店長の必須科目と位置づけ、副支店長や渉外担当者にも2019年7月までの受験を義務付けています。

また、百五銀行は、税務や保険、不動産などの幅広い知識を持つファイナンシャルプランナー1級などの専門資格を持つ人材を、今後3年間で現在の約2倍となる300人以上に増やす計画を立てています。このように、各行が外部の専門資格を活用し、事業承継・M&Aのプロフェッショナル集団を形成しようと注力していることが分かります。

人材育成と並行して、組織体制の強化も進んでいます。十六銀行は、2019年3月に事業承継を専門的に扱う部署を新設し、8人の人員のうち4人を支店長経験者で固めました。百五銀行や三重銀行も、2019年4月に専門部署を立ち上げており、事業承継支援を全行的な重要戦略として位置づけていることが伺えます。地域金融機関が、専門部署を設けて本部の体制を強化することで、支店の営業担当者を後方からしっかりと支援できる体制を構築していると言えるでしょう。

北陸地方の信用金庫でも、コンサルティング能力の強化に熱心です。にいかわ信用金庫(富山県魚津市)は、2019年4月から、正規職員約140人を対象とした奨励金制度を開始しました。税理士や司法書士の資格を取得すれば10万円、社会保険労務士なら7万円といった奨励金を支給することで、職員の資格取得へのモチベーションを高めています。同信金の岸和雄理事長は、「事業承継などのコンサルティング能力強化には、職員一人ひとりのスキルアップが不可欠だ」と強く語っています。

高岡信用金庫(富山県高岡市)は、中小企業経営の知識を体系的に学ぶことができる中小企業診断士の資格取得を後押ししており、現在、中小企業大学校へ4名の職員を派遣中です。2020年3月までに資格保有者を現在の5名から9名に増やす目標を掲げています。吉岡周理事長は「専門知識を備えた職員を増やし、お客様へのご提案の幅を広げたい」との考えを示し、今後も継続して職員の研修に力を入れていく方針です。

また、実務経験を通じたOJTによる人材育成も活発です。福井信用金庫(福井市)は、2017年に本店内に「経営サポート部」を設置しました。県内各支店から若手の営業担当者10名程度を集め、同部で法人営業を専業として担当させることで、実践的な事業承継支援のスキルを習得させているのです。

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デジタル連携でM&Aを円滑化

一方、宮城県の七十七銀行は、デジタル技術を活用した外部連携を進めています。中小企業向けに事業承継のマッチングサイトを運営するバトンズ(東京・千代田)などと提携し、後継者不足に悩む中小企業の経営者が、スムーズに人材確保やM&Aを行えるようサポートしています。

バトンズが提供するネット上のマッチングサービスは、全国規模で事業承継のニーズを集約し、事業の継続を諦めかけた企業と、それを引き継ぎたい企業を結びつける役割を果たします。七十七銀行はさらに、宮城県内で事業承継の相談を手がける公益財団法人みやぎ産業振興機構(仙台市)とも連携し、情報を共有しながらバトンズへとつなげ、事業承継やM&Aを積極的に支援しています。

地域金融機関がこれほどまでに支援体制の充実に尽力する背景には、事業承継を真剣に考える取引先が、近年急速に増加しているという現実があります。中部経済連合会が実施した調査では、中小企業の64%が事業承継について「現在問題になっている」または「将来的に問題になる」と回答しており、問題意識が非常に高いことが浮き彫りになっています。

もし、円滑な事業承継が進まなければ、地域経済全体に大きな打撃を与えることになりかねません。地域金融機関にとっても、貸出先そのものが減少し、経営基盤を揺るがす事態に発展する可能性があります。だからこそ、事業承継に関する支援を充実させることは、単なる顧客サービスに留まらず、低金利環境が長引くなかで、新たな収益源を確保していくための極めて重要な戦略になっていると言えるでしょう。

私見になりますが、こうした地域金融機関の動きは、単にビジネス上の都合だけでなく、地域経済と雇用を守るという強い使命感に基づいていると拝察いたします。地域に根ざした彼らが、専門知識とデジタル連携を駆使して、中小企業という地域の宝を守る「守り人」として機能し始めていることは、日本経済にとって非常に心強い兆候だと確信しています。

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