2019年11月22日、日本映画をこよなく愛する人々の心に響く、温かなエピソードが届きました。ゲオホールディングスの舵取りを担う遠藤結蔵社長が、長年の友人である活動弁士・坂本頼光さんとの特別な交流を明かしています。二人の出会いは約20年前、落語研究会という共通の趣味を通じて芽生えたものでした。初対面でありながら、映画『忠臣蔵』の理想の配役について夜が明けるまで語り合ったというエピソードからは、二人の映画に対する並々ならぬ熱量が伝わってきます。
遠藤社長が「映画のウィキペディア」と最大級の賛辞を送る坂本さんは、まさに歩くデータベースのような存在です。ウィキペディアとは、インターネット上で誰もが情報を編集・参照できる膨大な百科事典のことですが、坂本さんの知識量はまさにその人間版と言えるでしょう。例えば、団地で俳優が蕎麦を啜るという断片的な記憶を投げかけるだけで、即座に『しとやかな獣』という正解を導き出してくれます。この驚異的な記憶力と深い造詣は、ファンからも驚きと尊敬の眼差しを向けられています。
ここで注目したいのが、坂本さんの職業である「活動弁士」という存在です。これは、かつての無声映画(サイレント映画)において、映像の傍らで物語の解説や登場人物のセリフを一人で何役もこなして語る専門職を指します。音声技術が未発達だった時代の花形職業でしたが、現代では非常に希少な存在となりました。SNS上でも「今の時代に弁士の語りで映画を観るのは、究極の贅沢かもしれない」といった、古き良き芸能を再評価する声が数多く上がっています。
遠藤社長によれば、現在日本に在籍する活動弁士はわずか十数名に過ぎないとのことです。2019年11月22日時点の状況として、伝統芸能の火を絶やすまいと孤軍奮闘する坂本さんの姿は、同じく文化を届ける立場にある遠藤社長にとっても大きな刺激となっているようです。一つの道を極めようとする友の背中に、自身の経営者としての姿勢を正す思いを抱く。こうした利害関係を超えた「敬意」こそが、真の大人の友情と呼べるのではないでしょうか。
私は、こうしたデジタル全盛の時代だからこそ、坂本さんのような「個人の身体を通じた表現」が価値を持つと考えます。膨大なデータを瞬時に引き出す知識量もさることながら、そこに血の通った「語り」が加わることで、古い映画は再び命を宿すのです。映画館での体験が多様化する中で、日本独自の弁士文化が次世代へ受け継がれることを願わずにはいられません。友人を誇らしく語る遠藤社長の言葉からは、技術革新の先にある「変わらない情熱」の大切さを教わった気がします。
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