2019年11月28日、国税庁は2018事務年度(2018年7月から2019年6月まで)における所得税の調査結果を公表しました。今回の発表で最も世間の注目を集めているのは、多額の株式や不動産を所有する「富裕層」への厳しい監視の目です。調査が行われた5313件のうち、なんと85%に相当する4517件で申告漏れが発覚しました。その所得総額は763億円に達し、統計を開始した2009年以降で過去最高を記録しています。
国税局が徴収を決定した追徴税額も、前年度比で15%増となる203億円にまで膨れ上がりました。ここで言う「追徴税額」とは、本来納めるべき税金を正しく申告していなかった場合に、ペナルティとして加算される税金のことです。SNS上では「これほど高い確率で漏れが見つかるとは驚きだ」「真面目に納税している身としては、さらなる厳罰化を望む」といった、公平な税制を求める厳しい意見が相次いで投稿されています。
新制度「CRS」の導入で海外に隠された資産が丸裸に
富裕層の申告漏れがこれほどまでに急増した背景には、資産運用の国際化と国税当局による包囲網の強化があります。特に強力な武器となっているのが「CRS(共通報告基準)」という新しい国際制度です。これは、各国の税務当局がお互いに外国人の金融口座情報を交換する仕組みで、2018年秋には日本も海外64カ国・地域から約55万件もの口座情報を入手しました。これにより、タックスヘイブンと呼ばれる租税回避地の実態も把握されつつあります。
この情報網の威力は凄まじく、海外投資に関連する富裕層の申告漏れ所得は328億円と、4年前の約3倍にまで急増しています。かつては「海外口座ならバレない」という考えもあったかもしれませんが、今やインターネットを介した国際的な資金の流れは隠し通せません。今回の調査では、株式の売却で十数億円規模の申告漏れを指摘された具体的な事例も公表されており、当局がいかに「本気」であるかが伺えます。
また、最近のトレンドを反映して、ネットオークションや広告収入などで利益を得ている個人、いわゆる「ネット転売」や「インフルエンサー」層への調査も強化されています。こちらの申告漏れも264億円と過去最高を更新しており、特定の富裕層だけでなく、新しい形態のビジネスに対しても国税庁のメスが入っています。もはや、デジタル空間での経済活動も完全に当局の監視下にあると認識すべきでしょう。
編集者としての個人的な見解ですが、テクノロジーの進化が脱税の抜け道を作るのではなく、むしろ透明性を高める方向に作用している点は歓迎すべきことだと感じます。資産家がその責任を果たすことは、社会のインフラを維持する上で不可欠な要素です。海外資産の把握が進むことで、一部の巧妙な課税逃れが是正され、日本全体の納税意識がより健全なものへとアップデートされていくことを期待して止みません。
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