【タルマーリー】鳥取・智頭町から世界へ!「腐る経済」と天然菌パンが教える真の豊かさとは

鳥取県智頭町、森林が面積の9割を占める深い緑の中に、全国からパン好きが吸い寄せられる場所があります。それが、渡辺格氏(48歳)と妻の麻里子氏が営む「タルマーリー」です。2019年11月9日現在、ここで作られる天然菌のパンとクラフトビールは、単なる食品の枠を超え、新しい生き方のシンボルとして輝きを放っています。SNSでは「パンの概念が変わった」「不便な場所だけど、わざわざ行く価値がある」と、その哲学に共鳴する声が絶えません。

渡辺氏の思考の核にあるのは、2013年に出版された著書「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」に綴られた独自の経済観です。この本は韓国や台湾、中国、そして2019年6月にはフランスでも翻訳され、今や世界中のファンを智頭町へと惹きつけています。「腐る経済」とは、効率や蓄積ばかりを優先し、利子で増え続ける「腐らないお金」が支配する現代社会へのアンチテーゼです。自然のサイクルに倣い、循環する豊かさを取り戻そうとする試みと言えるでしょう。

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天然菌と自然栽培が織りなす「弱者の共生」が生む味わい

タルマーリーのパン作りにおいて主役を務めるのは、その土地に息づく「天然菌」たちです。一般的にパン作りで使われるのは、発酵力を高めるために工場で純粋培養された「イースト」などの業務用菌ですが、これらはどんな素材も画一的な味に変えてしまいがちです。対して天然菌は、環境を整えなければうまく働きません。しかし、良質な素材と出会うことで、単調なイーストでは決して出せない複雑で深い香りと風味を醸し出してくれるのです。

渡辺氏は、この菌たちの力を最大限に引き出すため、無肥料・無農薬の「自然栽培」にこだわっています。自然栽培とは、農薬や肥料に頼らず、土本来の力を生かす農法のこと。2019年11月9日現在、地元の若き移住者たちと連携し、品種改良の手が入っていない「古代小麦」の栽培にも挑戦しています。高コストであっても地場産の安全な素材を使う姿勢は、地域の農業を守り、まっとうな労働にまっとうな対価を支払うという、健全な地域経済のモデルを模索している証でもあります。

遠回りの末に辿り着いた「失敗さえも楽しむ」パンの道

異色の経歴を持つ渡辺氏の半生もまた、魅力の一つです。かつてはパンクロックに心酔し、パチプロとしてその日暮らしを夢見たり、医者を目指して挫折したりと、激しい紆余曲折を経験してきました。「あきらめた先にパンの道しか残らなかった」と笑う彼ですが、その遠回りこそが、効率至上主義に毒されない柔軟な視点を作ったのでしょう。2008年に千葉県で開業し、岡山を経て2015年に智頭町へ。より良い環境を求めて移転を繰り返す姿は、まさに菌のように自由に生きる姿そのものです。

編集者としての私見ですが、タルマーリーの挑戦は、私たちが忘れかけていた「手間暇」の価値を再定義していると感じます。合理性だけを追い求めれば、パンはただの効率的な栄養源に成り下がりますが、渡辺氏が作るパンには、地域の繋がりや自然への敬意という「物語」が詰まっています。2019年11月9日、過疎化が進む地方から発信されるこの力強いメッセージは、停滞する日本経済に一石を投じる、最もパンクで豊かな革命なのかもしれません。

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