2020年1月の投開票に向けて熱を帯びる台湾総統選挙ですが、ここにきて大きな動きがありました。対中融和路線を掲げる最大野党・国民党の公認候補である韓国瑜・高雄市長が、2019年11月14日に海外メディアとの会見に応じました。注目すべきは、混迷を極める香港情勢について、中国当局に対し「香港行政長官の普通選挙を認めるべきだ」と踏み込んだ発言をした点です。
普通選挙とは、特定の条件を満たすすべての市民に投票権を認める制度ですが、現在の香港では、中国政府の息がかかった選挙委員が長官を選ぶ仕組みとなっています。民主派が掲げる「五大要求」の中でも、この普通選挙の実現は最もハードルが高いとされています。韓氏は、中国側がこの要求を飲み、一方で香港側が独立を追求しないという約束がなされれば、双方が歩み寄りを見せて安定を取り戻せるとの持論を展開しました。
この発言の背景には、香港のデモ激化に伴い台湾国内で急速に高まった対中警戒感があります。これまでの韓氏は「親中派」というイメージが強く、それが逆風となって支持率の低迷に繋がっていました。SNSでは「選挙目当ての変節ではないか」という厳しい声も上がっていますが、あえて中国が嫌がる普通選挙に言及したことは、自身の親中色を薄めたいという強い意志の表れと言えるでしょう。
台湾の自由は譲れない!一国二制度を巡る攻防
韓氏は会見の中で、台湾人が自由と民主主義を何よりも大切にしている点に疑う余地はないと強調しました。中国が提案している「一国二制度」による統一については、台湾の人々が絶対に受け入れることはないと断言しています。これは、中国との融和を重視しながらも、台湾独自の主権と民主的なライフスタイルは守り抜くという、複雑な舵取りを迫られる韓氏の苦渋の決断とも読み取れます。
一方で、韓氏はライバルである現職の蔡英文総統への批判も忘れていません。蔡政権が中国との対話を拒んでいることが、かえって台湾を危険にさらしていると主張しています。ここで韓氏が解決策として持ち出したのが「92年コンセンサス」です。これは1992年に中台当局が「一つの中国」の原則を口頭で確認したとされる合意を指しますが、韓氏はこの原点に立ち返ることこそが平和への近道だと説いています。
2019年11月12日に発表された最新の世論調査では、蔡氏が41.2%の支持を得て独走し、韓氏は25.6%と大きく引き離されているのが現状です。しかし、韓氏は「多くの国民が現状に不満を抱いている」と自信をのぞかせ、数字には表れない民心の変化に期待を寄せています。選挙戦も佳境に入りますが、自由を愛する台湾の人々が最終的にどのようなリーダーを選ぶのか、世界中がその行方に注目しています。
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