アジアの観光シーンに大きな激震が走っています。2019年11月04日現在、台湾を訪れる中国大陸からの観光客が記録的な減少を見せており、現地では緊張感が高まっている状況です。台湾の内政部移民署が発表した統計によれば、2019年09月の中国人旅行者数はわずか6万2462人にとどまり、前年の同じ時期と比較して約57%も落ち込むという異例の事態に陥っています。
この急激な冷え込みの背景には、中国当局による強力な制限措置が存在します。2019年08月から中国は台湾への「個人旅行」の停止を断行しましたが、実はその影響は団体ツアーにまで波及しているのです。かつては賑わいを見せていた観光地からも大陸からの団体客の姿が消えつつあり、個人・団体ともに前年比で6割減という、極めて深刻な数字が突き付けられています。
SNS上では「台湾の静かな観光を楽しめる」といったポジティブな反応がある一方で、「現地のホテルや飲食業への打撃が心配だ」という懸念の声も数多く上がっています。政治的な意図が色濃く反映された今回の制限に対し、台湾国内では戸惑いと反発が入り混じった複雑な感情が渦巻いているようです。自由な往来が制限される現状は、観光の枠を超えた社会問題として注目されています。
2020年1月の総統選を狙った政治的圧力の正体
なぜ、このタイミングで厳しい制限が課されたのでしょうか。その鍵を握るのは、2020年01月11日に投開票を控えた「台湾総統選挙」です。ここで言う「総統」とは、台湾における国家元首を指す最高職のことですね。中国側は、現在政権を担い独立志向を持つ「民主進歩党(民進党)」の蔡英文氏が再選することを、何としても阻止したいという思惑を抱いているのでしょう。
中国政府の窓口である台湾事務弁公室は、2019年08月の時点で、制限の理由を「民進党が台湾独立運動を推進しているため」と明言しました。彼らが望んでいるのは、対中融和路線を掲げる最大野党「国民党」への政権交代です。つまり、観光客という「経済の蛇口」を絞ることで、蔡政権への不満を煽り、選挙結果をコントロールしようとする高度な政治工作の一環と言えます。
さらに外交面での揺さぶりも加速しています。2019年09月には、南太平洋のソロモン諸島とキリバスが相次いで台湾と断交し、中国と国交を樹立しました。このように「経済」と「外交」の両面から包囲網を敷く手法は非常に強引に映ります。しかし、編集者の視点から言えば、こうした圧力はかえって台湾の人々の自尊心を傷つけ、蔡政権への支持を固める「逆効果」を生む可能性も高いでしょう。
一国二制度を巡る香港の情勢も相まって、台湾市民の自由への意志はかつてないほど強まっています。中国による一方的な締め付けが、かえって台湾の国際的なプレゼンスを際立たせているのは皮肉な結果かもしれません。観光客の減少という短期的苦境を、台湾がどのようにして多角的な観光戦略や国際連携へと転換させていくのか、今後もその動向から目が離せません。
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