かつて写真フィルムの巨人として世界を席巻した富士フイルムホールディングスが、いま劇的な転換期を迎えています。2019年11月12日に発表された2019年4月から9月期の中間決算では、同社のヘルスケア事業が驚異的な成長を遂げていることが明らかになりました。営業利益は111億円に達し、なんと前年の同じ時期と比較して約4.6倍という、目を見張るような数字を叩き出しています。
SNS上では「もはやカメラの会社ではない」「多角化の成功例として教科書に載るレベル」といった驚きと称賛の声が相次いでいます。為替相場において円高が進行したことで、全社的には95億円もの減益要因を抱える厳しい状況でしたが、それを力強く支えたのがこのヘルスケア部門です。全社の通期営業利益は過去最高の2400億円という強気な予想を維持しており、企業の地力の強さが伺えるでしょう。
バイオ薬と再生医療が牽引する驚異のV字回復
好調の背景には、バイオ医薬品の開発製造受託(CDMO)や再生医療分野での躍進があります。CDMOとは、製薬会社から薬の製造や開発プロセスを請け負う専門的なサービスを指します。自社で工場を持つリスクを抑えたい製薬会社が増える中、富士フイルムの高度な生産技術が大きな武器となりました。2020年3月期の通期見通しも上方修正され、前年比44%増の480億円に達する見込みです。
さらに、細胞を育てるために欠かせない栄養液である「培地(ばいち)」を手がける企業の買収も、成長を大きく後押ししました。再生医療において、細胞を効率よく増殖させる技術は心臓部とも言える重要な領域です。医療ITや内視鏡の販売も堅調に推移しており、ヘルスケア事業全体の売上高は3%増の2304億円を記録しています。多角的な攻めの姿勢が、確かな収益という形で実を結んでいるようです。
富士ゼロックス完全子会社化で狙う盤石の経営基盤
経営の大きなトピックとして、2019年11月8日に富士ゼロックスを完全子会社化したことも見逃せません。これにより利益の取り込みが増え、今期の純利益を70億円押し上げる効果が見込まれています。最終的な純利益の予想は、前期比17%増の1620億円へと引き上げられ、過去最高を更新する勢いです。助野健児社長も「かなり力がついてきている」と語り、新体制への揺るぎない自信を覗かせています。
一方で、複合機などを扱うドキュメント事業は、欧米向けの輸出が減少したことで売上高は4853億円と3%減の結果となりました。しかし、収益性の低い製品を整理する徹底した構造改革が功を奏し、利益面では27%増の549億円を確保しています。非効率な部分を削ぎ落とし、成長分野へリソースを集中させる戦略は、現代の日本企業が学ぶべき鮮やかな「選択と集中」の形ではないでしょうか。
資本効率を示す指標であるROE(自己資本利益率)8%の目標も、当初の予定より1年前倒しで達成される見通しとなっています。私は、同社がフィルムで培った「化学の知見」を医療に応用した点に、単なる延命ではない真のイノベーションを感じます。かつてのコア事業が衰退しても、技術の核を捨てずに進化し続ける姿勢こそが、富士フイルムをヘルスケアの旗手へと押し上げた真因だと言えるはずです。
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