【天草ジオパーク認定返上へ】世界遺産との両立に苦悩?地域振興とコストの狭間で揺れる初の決断

熊本県の天草地方が誇る、地球の鼓動を感じさせる貴重な自然遺産「天草ジオパーク」が、大きな転換点を迎えています。2019年11月12日、天草市などの2市1町で構成される推進協議会が、日本ジオパークとしての認定を返上する方針を固めたことが明らかになりました。もしこれが実現すれば、全国に広がる日本ジオパークの歴史において、自ら認定を辞退する初めての事例となります。

「ジオパーク」とは、地質学的に重要で美しい景観を保護しつつ、教育や観光に活用して地域経済を活性化させる仕組みを指します。いわば、大地(ジオ)の公園です。天草は1億年前の恐竜時代の地層が残る極めて稀な場所として、2014年にその価値を認められました。しかし、華々しいスタートから数年が経過した今、地域が抱える現実は決して甘いものではなかったようです。

スポンサーリンク

再認定の厳しさと「費用対効果」への疑問

ジオパークの看板を維持し続けるには、4年ごとに実施される厳しい審査をパスしなければなりません。天草ジオパークは2018年の審査において、その魅力を十分に伝えきれていないという手厳しい指摘を受け、合格一歩手前の「条件付き再認定」という結果に終わりました。この判定が、協議会のなかで認定継続の意義を問い直すきっかけとなったのは想像に難くありません。

協議会内では、案内板の設置や維持管理に多額の予算を投じているものの、期待していたほど交流人口、つまり観光客の増加に結びついていないという冷ややかな意見が噴出しました。SNS上でも「ジオパークという言葉自体が一般の人には難しすぎる」「地層に興味がある層は限られている」といった、認知度の低さや専門性の壁を指摘する声が目立っています。

世界遺産へのシフトと新しい天草のブランド戦略

認定返上の背景には、もう一つ大きな外的要因が存在します。それは2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されたことです。天草市にある崎津集落などが世界的な注目を集めるなか、自治体としては限られた予算とリソースを、自然(ジオ)よりも文化的な魅力の発信に集中させたいという狙いがあるのでしょう。

私個人の意見としては、今回の決断は非常に勇気ある「選択と集中」だと感じます。しかし、一度失ったブランドを取り戻すのは容易ではありません。日本ジオパークネットワークの事務局長が「認定だけで人が集まるわけではない」と苦言を呈した通り、地域の宝をどう料理して提供するかという視点が欠けていた可能性も否定できません。

天草ジオパーク推進協議会は、2020年3月をもってネットワークを離脱する予定です。今後は特定の枠組みにとらわれず、歴史と自然が融合した天草独自の観光スタイルを模索していくことになるでしょう。全国44地域に広がる他のジオパークにとっても、今回の天草の苦渋の決断は、地域振興の在り方を根本から問い直す大きな警鐘となるはずです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました