2019年11月13日、横浜市が推し進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致を巡り、専門家からは慎重な議論を求める声が上がっています。静岡大学の鳥畑与一教授は、現在提示されている事業計画について、過大な投資への懸念を隠しません。経済効果や雇用創出といった華やかな数字が並びますが、これらは参入を狙う事業者が描いた、少し背伸びをした青写真に見えるのです。アジア各国の既存施設から顧客が流れてくるのか、あるいは日本人に馴染みの薄いトランプやルーレットが本当に定着するのか、不透明な要素は拭えません。
IRとは「Integrated Resort」の略称で、カジノのほか、ホテルや国際会議場、商業施設などが一体となった巨大な複合施設を指します。しかし鳥畑教授は、施設の規模が大きくなればなるほど、投資を回収するためにカジノの収益に依存せざるを得ない構造を指摘します。もし収益が想定を下回れば、本来優先すべきギャンブル依存症対策が形骸化し、利益の追求が優先されてしまう危険性があるのです。SNS上でも「地元経済を潤すはずが、依存症患者を増やすだけではないか」といった不安の声が数多く噴出しています。
横浜の未来を左右する「社会的コスト」の正体
横浜市が期待を寄せる増収効果の裏側には、見落とされがちな「社会的コスト」という大きな落とし穴が潜んでいます。社会的コストとは、依存症に伴う家庭崩壊や破産、精神疾患の治療費、犯罪の増加など、社会全体が支払わなければならない目に見えない負債のことです。これらを総合的に判断すれば、横浜のまちづくりにおいてカジノが最善の選択肢であるとは断言できないでしょう。目先の華やかさに目を奪われず、10年後、20年後の街の姿を冷静に見据える必要性が、今まさに問われていると言えます。
さらに深刻なのは、カジノの存在が既存の地域経済を圧迫する可能性です。もし市民の消費がギャンブルに集中してしまえば、本来行われるはずだった健全な買い物や外食が減り、結果として消費税などの税収を損なう事態を招きかねません。特に「高齢者の貯蓄」がターゲットになる懸念は切実です。大切に蓄えてきた老後資金や、孫の世代の教育費までもがカジノへ流れてしまうようなことがあれば、それは豊かな未来を先食いする行為に他なりません。
鳥畑教授は、横浜こそが「カジノに頼らないまちづくり」を実現できるポテンシャルの高い都市であると信じています。2010年にカジノを解禁したシンガポールでも、開業から時間が経過した今、ひずみが顕在化しつつあることに注目すべきでしょう。短期的な経済効果に飛びつくのではなく、市民が安心して暮らせる土壌を育むことこそが、真の発展への近道ではないでしょうか。私は、この議論を通じて横浜市民が抱く違和感こそが、健全な街を維持するための防波堤になると考えています。
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