2019年11月14日、エネルギー業界を揺るがしている関西電力の金品受領問題について、公共政策の専門家である明治大学の松浦正浩教授が、今後の原発運営における極めて重要な課題を指摘されました。今回の不祥事は単なる「裏金の授受」という枠を超え、原発事業の根幹にある「合意形成」の歪みを浮き彫りにしています。
松浦教授は、原発マネーの還流以上に、特定の企業に業務を発注し続けられる裁量権の不透明さを危惧されています。半ば公共事業としての性質を持つ電力会社が、特定の事業者を自由に選べる仕組みこそが、政治家への不正献金などを生む温床になっているのです。現地の人々が自ら透明性を高める動機を持ちにくい以上、外部からの厳しい監視と改革が欠かせないでしょう。
SNS上では「民間企業だからと国会招致を渋る政府の姿勢は、責任の所在を曖昧にしている」といった批判の声が多く上がっています。教授も、国が意図的に責任を不透明にしているのではないかという疑念を口にされており、内輪の論理と社会の常識との間にある大きなズレを解消することが、信頼回復への第一歩になると考えられます。
崩壊した「キーパーソン型」合意形成と広域自治体との連携
かつて原発の稼働を支えたのは、地域の有力者(キーパーソン)を味方につける手法でした。しかし松浦教授は、2011年の東日本大震災を経て、そのモデルは完全に限界を迎えたと断言します。震災前は「事故が起きるか否か」が議論の中心でしたが、福島第一原発の事故以降、私たちは「事故は起こりうるもの」という現実を突きつけられました。
この意識の変化により、立地自治体だけでなく周辺自治体も含めた「安全協定」の締結が必須となりました。ここで言う安全協定とは、自治体が原発の再稼働に対して事前了解を与える権利などを明文化した契約を指します。調整に関わるプレーヤーが増えるほど、特定の個人への利益誘導といった旧来の手法は、むしろ全体の合意を妨げるリスクとなるのです。
現在の状況を放置すれば、自治体首長の交代だけで再稼働がストップしかねない不安定な状態が続きます。これは国全体のエネルギー政策にとって大きなリスクです。私は、特定地域にのみ恩恵が集中する「電源3法交付金」のあり方を含め、周辺住民が納得できる公平な制度設計が急務であると考えます。
曖昧な制度からの脱却!国が主導する法的枠組みの構築へ
現在、自治体と事業者の交渉は場所によって結果がバラバラな「属人的」なものとなっています。例えば、茨城県の日本原子力発電は周辺6市村との新協定を結びましたが、他地域では自治体側が妥協せざるを得ないケースも見られます。このような格差が生じるのは、合意形成のあり方に明確な法的根拠がないからです。
松浦教授は、国が事業者と自治体の間の交渉に依存し続ける不自然さを指摘されています。再稼働を推進するのであれば、国は政治的なリスクを恐れず、合意形成の手順をしっかりと制度化すべきでしょう。不透明な「地元の了解」という言葉に逃げるのではなく、誰がどのような責任と権限を持つのかを法律で定めるべき時が来ています。
関西電力の問題は、単なる一企業の不祥事ではなく、日本がこれまで目を背けてきた「原発立地の民主的プロセス」を問い直す契機となりました。これからの時代に求められるのは、特定の誰かによる支配ではなく、社会全体が納得できる透明性の高い対話の場を、国が責任を持って提供することに他なりません。
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