日本のガラス産業を牽引する日本板硝子が、厳しい経営環境に直面しています。同社が発表した2020年3月期の業績見通しによれば、建築用と自動車用を合わせた主力の汎用ガラス事業における営業利益は、前期比で約2割も減少する320億円程度にとどまる見込みです。世界的な景気動向の影響をダイレクトに受ける形となり、業界内でも大きな波紋を広げているようです。
ネット上やSNSでは「製造業の景気後退が鮮明になってきた」といった懸念の声や、「安価な海外製品との競争は避けられない宿命なのか」という冷静な分析が飛び交っています。高品質を誇る日本ブランドが、価格競争という荒波の中でいかに独自の価値を証明していくのか、多くの投資家やビジネスマンがその動向を注視している状況と言えるでしょう。
中国勢の台頭と建築ガラス市場の価格競争
減益の大きな要因となっているのが、建築向けガラス事業の苦戦です。2019年11月21日現在の予測では、同部門の営業利益は前期比2割減の200億円弱にまで落ち込む見通しとなっています。これは、欧州や東南アジア市場において、中国系メーカーをはじめとする低価格戦略を武器にした競合他社にシェアを奪われていることが主な原因です。
汎用ガラスとは、住宅の窓やビル外壁などに使われる、いわゆる「板硝子」を指します。日本板硝子はブランド価値を守るために安易な値下げに踏み切らず、価格の維持を最優先する経営判断を下しました。しかし、コストパフォーマンスを重視する市場の流れには抗えず、販売数量が伸び悩むというジレンマに陥っているのが現状なのです。
世界的な自動車販売の低迷がもたらす影
一方で、自動車向けガラス事業も厳しい局面を迎えています。こちらの営業利益も約2割減の120億円程度となる見込みで、特に中国市場における欧州メーカーの販売不振が直撃しました。自動車ガラスは、フロントガラスやサイドウィンドウに使用される強化ガラスなどを指しますが、完成車の売れ行きが鈍れば、当然ながら部品供給側もその余波を免れません。
北米市場では、人気の多目的スポーツ車(SUV)などの新車種向け生産において、「歩留まり」が改善するという明るいニュースも届いています。歩留まりとは、投入した原料からどれだけ良品が作れたかを示す割合のことで、これが高まれば生産効率は向上します。しかし、中国市場の冷え込みによるマイナス分を補うには至っていないのが実情でしょう。
日本国内の堅調さと避けて通れないコスト増
明るい兆しが見えるのは日本国内の市場です。国内の自動車メーカーによる販売が底堅く推移しているおかげで、ガラスの出荷台数自体は増加する傾向にあります。しかし、手放しでは喜べない事情も存在します。製造設備の性能を維持するために欠かせない定期修繕の時期が重なり、そのメンテナンス費用がコストを押し上げているためです。
編集者としての視点では、現在の日本板硝子は「耐え忍ぶ時期」にあると感じます。安価な中国勢との価格競争に飲み込まれず、品質とブランドを維持する戦略は、長期的には正解かもしれません。しかし、急速に変化するグローバル市場で生き残るためには、汎用品以外の高付加価値製品へのシフトをさらに加速させる必要があるのではないでしょうか。
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