海外渡航が自由化されてから2019年で55年目を迎えました。グローバル化の波が押し寄せる現代において、2018年の日本人海外旅行者数は過去最高を記録しています。しかし、この華やかなブームの裏側で、ある意外な格差が浮き彫りになりました。それは20代前半における男女の出国率の差です。データを見ると、この世代の男性は女性に比べて驚くほど海外への足が遠のいている現実が見えてきます。
JTB総合研究所の調査によれば、2018年における20歳から24歳の女性の出国率は40.5%に達し、全世代・性別の中でトップを走っています。対照的に、同年代の男性はわずか18.4%にとどまっているのです。SNS上では「女子旅のキラキラ感に比べて、男子は確かにインドア派が増えたかも」といった声や、「ネットで何でも見られるから満足してしまうのでは」という冷静な分析が飛び交っています。
実際に現役の男子大学生に本音を聞いてみると、非常に合理的な考え方が見えてきました。彼らにとって日本は「快適で安全な楽園」であり、わざわざその環境を捨ててまで不慣れな異国へ行くメリットを感じにくいようです。デジタル技術が発展し、物理的な移動を伴わずに世界中の情報にアクセスできる「グローバル社会」だからこそ、実体験としての旅行に高いハードルを感じてしまうという逆説的な現象が起きています。
専門家によれば、男性は女性に比べて海外旅行に対して「大義名分」を求める傾向が強いそうです。インスタグラムなどのSNSで直感的に「ここに行きたい!」と動く女性に対し、男性は「なぜわざわざ海外なのか」という明確な理由が必要になるのでしょう。この行動原理の差が、旅行者数の大きな開きとなって現れています。また、女子大生が母親と旅費を出し合って海外へ行く「母娘旅行」が定着していることも、女性の背中を押す要因となっています。
親世代の背中が影響?ミレニアル世代の旅行観を紐解く
ここで注目すべきは、今の若者の価値観は「親世代の映し鏡」であるという点です。1980年代から1990年代にかけて働き盛りだった親たちが、出張先で海外の魅力を楽しむ姿を子供に見せてこなかったことが、今の息子たちの無関心につながっている可能性は否定できません。調査でも、ミレニアル世代(2019年時点で23歳から29歳)の約2割が親の旅行の好みに影響を受けていることが判明しており、これは上の世代の約2倍の数字です。
企業側の視点では、海外経験への評価は依然として高いままです。例えば、旅の経験豊富な人材をマッチングする「旅人採用」というサービスでは、登録者の約7割が女性ですが、企業からは「行動力がある」と熱い視線が送られています。就職活動においても海外経験が武器になる時代、息子たちが内向き志向でいることは、親にとっても決して他人事ではない深刻な課題と言えるのではないでしょうか。
私は、この現象は単なる「草食化」ではなく、情報の飽和による「冒険心の麻痺」だと感じています。いつでもスマホで世界の裏側を覗けるからこそ、不確実な体験への投資をためらってしまうのでしょう。しかし、画面越しでは得られない現地の空気感やトラブルへの対応力は、何物にも代えがたい財産です。若い男性が再び外に目を向けるためには、家庭内での何気ない会話から「未知の世界の面白さ」を伝えていく、ちょっとしたきっかけ作りが今こそ求められています。
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