アマゾンが仕掛ける!低信用層を魅了する新クレカ「アマゾン・クレジット・ビルダー」の衝撃と潜在的な信用不安

2019年6月11日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比14ドル安とわずかに値を下げました。6営業日連続で上昇していた勢いの反動から、利益を確定しようとする売り注文が出たことが背景にあるようです。しかし、取引開始直後には、中国政府による経済への投資を促す施策のニュースが伝わり、製造業やハイテク関連の銘柄に買いが集まる展開となりました。インターネット通販の巨人、アマゾン・ドット・コムの株価も、この流れに乗って注目を浴びた銘柄の一つでしょう。

市場関係者の間で特に大きな関心を集めていたのは、アマゾンが同日から新たに提供を開始したクレジットカード、「アマゾン・クレジット・ビルダー」です。このカードは、これまでクレジットカードを持つのが難しかった、所得や「信用情報(クレジットスコア)」が低い個人を主な対象としています。具体的には、初めてクレジットカードを作る人や、過去に債務不履行(デフォルト)を起こしてしまい、通常のカードが作れなくなった人々を支援することを目的としているのです。

この新しいカードの大きな特徴は、「デポジット(預かり金)」の仕組みにあります。カードを発行してもらう際に、利用者は100ドル(当時のレートで約1万800円)から1000ドルの範囲で現金を預け入れる必要があります。この預け入れた金額がそのまま「信用枠」となり、その範囲内でしか買い物ができない設定です。また、利用できるのはアマゾンのサイトでの買い物に限定されており、他の店舗やインターネット取引では利用できない点も特徴的でしょう。支払い方法として、商品代金を6カ月、12カ月、24カ月の3種類から選べる分割払いが用意されており、この期間中は金利が発生しないというのは、利用者にとって非常に魅力的ですね。

カード代金を毎月決められた期日までにしっかりと返済し、それを一定期間継続できれば、アマゾンが一般向けに提供している通常のクレジットカードへとアップグレードできる道が開かれます。つまり、この「アマゾン・クレジット・ビルダー」は、信用度が低い層の人々が、日々の買い物を通じて着実にカードの負債を返済する実績を積み重ねることで、彼らの「信用スコア」を高め、将来的には一般的なクレジットカードを持てるように手助けする狙いがあると考えられます。

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アマゾンの「全方位戦略」とミレニアル世代への熱視線

アマゾンは、富裕層から低所得層まで、あらゆる顧客層を取り込む戦略を強化しています。例えば、高級スーパーマーケットのホールフーズ・マーケットを買収することで、中・高所得の顧客を確実に引き付けていますし、一方で、国の生活保護を受けている低所得世帯に対しては、プライム会員の年会費を一般会員よりも約4割安くするサービスを導入しています。今回の「アマゾン・クレジット・ビルダー」の導入は、この低所得・低信用度の顧客層をさらに深く取り込もうとする戦略の一環でしょう。

アマゾンが特にターゲットとしている層の一つに、「ミレニアル世代」と呼ばれる、記事作成時(2019年6月)で23歳から38歳の若い世代がいます。この世代の8割以上は、日々の買い物を主にインターネットで行っていると言われています。しかし同時に、学生時代に借りたローン(学生ローン)の返済に追われていたり、所得自体がまだ低かったりする現状もあります。消費者信用照会サービス大手のエクスペリアンの調査によれば、ミレニアル世代の信用スコアは全米平均よりも低い傾向にあり、そのため、一般的なクレジットカードを新規に作るのが難しいケースも少なくありません。

信用度が低いながらも、ネット小売りの市場においては極めて有望な顧客となり得るこのミレニアル世代を、新カード発行によって囲い込もうというアマゾンの戦略的な意図がはっきりと見えてきます。SNSなどでの反響を見ても、「普通のカードが作れない自分には朗報だ」「Amazonでしか使えないのは不便だけど、信用回復のチャンスになるなら試してみたい」といった、期待と、少しの不安を抱えた声が多く寄せられていました。

潜む高金利の罠と迫り来る信用不安の影

しかし、この新カードには思わぬ落とし穴が潜んでいる可能性も指摘されています。もし利用者が一定期間の分割払いを完済できなかった場合、さかのぼってペナルティーとしての高額な金利が課されてしまうのです。しかも、その金利は年率28.24%と非常に高く設定されており、これは当時の米国のクレジットカード金利の平均である約25%を上回る水準です。もし支払いが滞ってしまえば、利用者はたちまち大きなカード債務を抱え込む事態になりかねません。

米国の個人債務の状況は、新カード導入の背景にある潜在的な懸念を浮き彫りにしています。米調査会社ウォレットハブによると、米国のクレジットカードの債務残高は2018年末に過去最高の1兆ドルの大台に乗せ、リーマンショックなどの金融危機に見舞われた2008年のピーク時の9839億ドルをも上回りました。直近の2019年3月末時点のデータでも9848億ドルと高止まりしており、1世帯当たりのカード債務残高は8390ドルにも達しています。

ウォレットハブは、「カード債務残高の全米平均が1万ドルを超えてしまうと、債務不履行(デフォルト)が急激に増加する可能性がある」と強く警鐘を鳴らしています。そうなれば、銀行が融資に対して慎重になる「貸し渋り」が起こり、ひいては個人消費全体に深刻な打撃を与えることになると予測しているのです。私見ですが、アマゾンの低信用顧客を取り込む戦略自体は、すべての人に金融サービスへのアクセスを提供しようとする点で評価できます。しかし、高金利のペナルティー設定は、信用不安の波に飲まれやすい層を、さらに厳しい状況に追い込むリスクもはらんでおり、懸念を禁じ得ません。

アマゾンによる低信用顧客の獲得戦略が、彼らの信用度向上というポジティブな結果につながり、全体的な消費の拡大を促すのか、それとも、高金利の罠によって債務不履行の増加というネガティブな結果を招くのか、予断を許さない状況でしょう。信用不安が水面下で忍び寄る中で導入された新カードは、まさに「もろ刃の剣」であると言えるのではないでしょうか。

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