街の風景として親しまれてきた書店が、今まさに大きな転換点を迎えています。2019年9月27日、業界準大手の文教堂グループホールディングスは、経営再建に向けた具体的な「再生計画」を発表しました。長引く出版不況の荒波に抗うため、不採算店舗の整理や抜本的な財務基盤の強化に乗り出すことが決まったのです。
今回の計画の柱となるのは、金融機関からの借入金を株式に振り替える「債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)」です。これは、借金を資本に換えることで会社の財務体質を筋肉質にする手法を指します。あわせて、取次最大手の日本出版販売からの強力な金融支援も決定しており、背水の陣で黒字化を目指す姿勢が鮮明になっています。
SNS上では、このニュースに対して「学生時代に通った店がなくなるのは寂しい」「ネットで買えるのは便利だけど、本との偶然の出会いが消えてほしくない」といった切実な声が溢れています。多くの人々が、実店舗としての書店の価値を認めつつも、時代の変化に抗えない現状に複雑な思いを抱いている様子が伺えるでしょう。
アマゾン・エフェクトの脅威と加速する書店淘汰の現実
現在、書店を取り巻く環境はかつてないほど過酷です。米国発の巨大ECサイトが既存の小売業を圧倒する、いわゆる「アマゾン・エフェクト」の猛威により、消費者の購買行動は劇的に変化しました。経済産業省のデータによれば、書籍や音楽ソフトのEC化率は約30%に達しており、他の消費財と比べてもネット移行が顕著です。
2019年5月時点での国内書店数は約1万1446店と、1999年の約半分にまで激減してしまいました。スマートフォンの普及による「電子書籍」の台頭も無視できません。紙の本をめくる楽しさが、デジタルの利便性に取って代わられつつあるなかで、14年連続で出版市場の縮小が続くという異常事態が今もなお進行しているのです。
文教堂は今後、全国に約130ある店舗網を精査し、利益の出ない店舗の閉鎖を進める方針です。一方で、利益率の高い文具販売の強化や、赤字事業の売却といった「選択と集中」を急ぎます。2019年8月期には33億円の赤字を見込んでいますが、2021年8月期までの黒字転換という高いハードルに挑むことになります。
編集者としての視点:本を売る場所から「体験を買う場所」への脱皮
一人の本好きとして、文教堂の苦境は決して他人事ではありません。しかし、ただ本を並べて客を待つだけの「待ちの経営」が限界に達しているのは明白です。これからの書店には、単なる物販拠点ではなく、その場所に足を運ぶこと自体に価値を感じさせる「コミュニティ」としての役割が求められているのではないでしょうか。
例えば、TSUTAYAが独自書籍の開発や出版社との連携で成功を収めているように、そこでしか手に入らない価値をどう創出するかが鍵となります。文教堂が掲げる「文具の強化」も、単なる事務用品ではなく、生活を彩るライフスタイルの提案にまで踏み込めるかが勝負どころでしょう。守りの閉鎖ではなく、攻めの再編に期待したいところです。
2019年というこの激動の年に発表された再生計画は、日本の書店文化が生き残れるかどうかの試金石といえます。デジタル化の波は止められませんが、紙の温もりや書店の静謐な空気感を愛する読者は確実に存在します。文教堂がこの危機を乗り越え、新しい時代の書店のあり方を提示してくれることを切に願ってやみません。
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