今、日本の食品業界で、これまでのビジネスモデルが大きく変わりつつあります。その潮流とは、商品の種類を削減し、主力製品に経営資源を集中させる「選択と集中」の動きです。特に、お菓子業界ではこの傾向が顕著であり、この5年間でガムやアメなどの商品種類が約2割も減少しているというデータが出ています。清涼飲料や牛乳の分野でも、同様に商品数を減らし始める企業が増加しています。
この背景には、深刻化する人件費や物流費のコスト高騰があります。市場の成長が頭打ちとなる少子化の影響に加え、人手不足によるコスト増が企業の収益を圧迫している状況です。これまでは消費者の多様な好みに応えるため、多品種を生産してきましたが、その結果、在庫管理の負担が膨大になっていました。そこで、商品数を絞り込むことで作業効率を高め、人件費などの経費削減を図るとともに、投資を主力製品に集中させ、より強力なプロモーションを展開する狙いがあるのです。
全国のスーパー460店の価格情報などを集計する日経POS(販売時点情報管理)の調査によると、過去5年間で、少子化の影響を強く受けるお菓子の商品数は、実に約2割も少なくなっています。中でもガムやアメの減少は約3割にも達しており、その影響の大きさがうかがえます。長年にわたり多くの人々に愛されてきた商品の生産終了も相次いでおり、たとえば江崎グリコは2018年(平成30年)にガム「キスミント」の生産を停止しました。また、森永製菓も2019年(令和元年)夏に、昔ながらのチョコレート菓子「チョコフレーク」の生産を終える予定です。
もちろん、この流れはお菓子だけにとどまりません。乳製品では、チーズや牛乳の商品数が5年間で6%減少しており、ニチレイなどが扱う冷凍総菜も同様に6%の減少が見られます。ジュースやお茶などの清涼飲料は5年間で2%増加しましたが、2019年(平成31年)春からは削減に舵を切る企業も出てきています。例えば、キリンビバレッジでは、春の新商品を前年比で1~2割削減し、「生茶」など同社の主力ブランドへの投資を強化する方針です。
大手企業のトップからも、この方針を裏付ける発言が出ています。明治ホールディングス(HD)の川村和夫社長は、「もはや新商品だけを出し続けるビジネスモデルは過去のものだ」と指摘しています。実際に、同社はチョコレート菓子「ポルテ」などを削減した結果、菓子事業の売上高営業利益率は2019年(平成31年)3月期には17%となり、5年前と比べて13ポイントも改善しました。森永製菓でも、利益率が3年前と比べて3ポイント上昇し、6.2%を達成するなど、商品削減による収益性の向上が明確に表れています。
📚SNSの反響から見る消費者のホンネ
こうしたメーカーの「選択と集中」の動きに対して、SNS上ではさまざまな反響が見られます。特に、長年親しまれてきた商品の生産終了のニュースは大きな話題となり、「あの味がなくなるのは寂しい」「子どもの頃から食べていたのにショックだ」といった、惜しむ声が多く投稿されました。消費者の好みが多様化している現代において、選択肢が狭まることへの懸念も広がっているようです。一方で、「企業努力は理解できる」「主力商品がより美味しくなるなら歓迎」といった、経営効率化に一定の理解を示す声も存在します。
私自身の意見としては、企業の収益改善は持続可能な経営のために極めて重要であり、コスト高騰という厳しい環境下での商品削減は、現実的な選択であると考えます。しかし、選択肢の削減が顧客離れを招くリスクも無視できません。野村証券の藤原悟史アナリストが指摘するように、「利益率の改善は重要ですが、次の成長に向けて新たな価値のある提案ができるかが大事」という点は、まさに核心を突いているでしょう。メーカーは、数を減らす代わりに、主力品を磨き上げ、これまでにない新しい価値や体験を消費者に提供する必要があるのではないでしょうか。
例えば、商品の品質を徹底的に向上させる、もしくは健康志向や環境配慮といった現代的なニーズを捉えた高付加価値な製品を開発するなど、単なる効率化にとどまらない「新たな魅力」の創出が求められます。多様なニーズを持つ消費者にとって、本当に必要な商品が厳選され、より質の高い状態で届けられる未来は、必ずしもネガティブなものではないはずです。食品メーカー各社が、この難局を乗り越え、いかにして消費者を引きつけ続けるのか、今後の展開に注目が集まります。
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