世界的な産業のデジタル化を牽引する独シーメンスの日本法人が、2019年6月21日に東京都内で開催した事業戦略説明会で、日本の製造業を根底から変革するような、IoT(アイオーティー)関連事業の大幅な強化を発表しました。あらゆる「モノ」がインターネットに繋がるIoTは、製造現場の効率化の鍵を握る技術で、シーメンスはこの分野において、現在の生産設備監視サービスに留まらない、CAD(キャド:Computer-Aided Design、コンピューター支援設計)ソフトなども活用した、まさに総合的な製造業の支援を目指すとしています。
日本法人の藤田研一社長兼最高経営責任者(CEO)は、記者会見の場で「センサーで収集したデータの分析なども含めたデジタルインダストリーが、今後のコア事業になる」と、力強くその方向性を示されました。デジタルインダストリーとは、製造業の設計から生産、サービスに至る全ての工程をデジタル技術で繋ぎ、最適化を図るという考え方で、これにより製造業はこれまでにないレベルの生産性向上や、イノベーション創出が可能になります。シーメンスがこの分野に注力するのは、時代の大きな潮流であり、まさに未来への投資と言えるでしょう。
この強化の基盤となるのが、同社独自のIoTプラットフォームである「マインドスフィア」です。プラットフォームとは、多様なサービスやアプリケーションが稼働するための土台となる情報基盤のことで、マインドスフィアは、工場に設置されたセンサーから集められる膨大なデータを活用し、生産設備の稼働監視や予知保全を可能にします。さらに、シーメンスはCADソフト開発会社の買収なども積極的に進めており、設計から運用、メンテナンスまでを一気通貫でサポートできる体制を構築しているのです。 このような総合的なアプローチこそが、他社との大きな差別化要因になることでしょう。
実際、IoTは世界中で急速に拡大しており、世界では2020年までに500億個ものIoTデバイスがインターネットと接続されるという驚異的な見通しがあります。日立製作所や米ゼネラル・エレクトリック(GE)といったグローバル企業も、IoT関連ビジネスに大きな力を入れており、競争は激化の一途を辿っています。しかし、藤田社長は「グローバル生産の最適化や経営戦略の立案なども支援することで、競合と差異化を図る」と述べ、単なる技術提供に終わらず、顧客企業の経営レベルでの支援に踏み込むことで、圧倒的な優位性を確立する戦略を描いています。この姿勢は、日本の製造業の国際競争力を高める上で、非常に心強い支援となるに違いありません。
💡エネルギー事業も「再生可能」が柱に!環境変化に対応する戦略
また、事業戦略説明会では、シーメンスの主力のひとつである電力事業についても、重要な方向転換が語られました。独シーメンス本体が2019年5月に、2020年9月にガス・電力部門を分離上場し、新会社を連結対象から外す方針を発表したことにも関連しています。藤田社長は、世界的な環境意識の高まりにより「大型火力への投資が非常に不透明になるなか、再生可能エネルギーなどの分散化電源が柱になる」との認識を示しました。分散化電源とは、大規模な発電所ではなく、消費地の近くに小規模に配置される電源のことで、太陽光や風力、そしてバイオマス(生物資源)発電などがこれに該当します。
日本においても、シーメンスはバイオマス発電などを中心に、年間で4~5件の受注獲得を狙う方針だといいます。石炭などの化石燃料に依存しない、クリーンなエネルギーへのシフトは、もはや避けて通れない世界的な流れであり、シーメンスはこの分野でも積極的にビジネスを展開することで、持続可能な社会の実現に貢献していくのでしょう。産業のデジタル化とエネルギーのクリーン化という、二つの大きな潮流を捉えたシーメンスの戦略は、非常に魅力的であり、今後の展開から目を離すことはできません。
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