【G20大阪サミット】米中対立で「世界が液状化」!軸なき国際会議の行方とインド・ロシアの戦略【外交・国際情勢の深層】

2019年6月28日に開幕した主要20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)は、世界経済の安定を図るという理想とは裏腹に、米中二大国による覇権争いが色濃く反映され、「軸なき世界」の現状を浮き彫りにしています。貿易戦争を象徴とするこの対立は、各国の**「自国第一主義」を助長し、国際秩序が流動化する「世界の液状化」**という危機的な状況を映し出していると言えるでしょう。

日本が議長国としてこのサミットを取りまとめようとしていますが、当初描いていた「米中が主導し、日本が調整役となって北朝鮮やイランの核問題など地球規模の課題を議論する」という理想像からは大きくかけ離れて展開しています。主要国間の利害が複雑に絡み合い、会議は混迷を深めている様子がうかがえます。

なかでも、デジタル分野に関する特別会合では、米中の対立が鮮明になりました。中国の習近平国家主席が「公平で差別のない市場をつくる」と発言したのに対し、米国のトランプ大統領は、中国の通信機器大手である**華為技術(ファーウェイ)**の製品について「機密情報が中国政府に筒抜けになる」と、同盟国への使用停止を促す主張を展開しました。会場では安倍晋三首相を挟んで両隣に座るトランプ氏と習氏の間で、トランプ氏の発言に習氏が一瞬表情をこわばらせる場面も見られ、緊迫した空気が漂いました。

実は、習氏は当初このトランプ氏のスピーチがある特別会合への欠席を検討していました。しかし、前日の会談で安倍首相が「私はこの特別会合を重視している」と直接出席を求めたことで、参加が決定した経緯があります。また、特別会合で打ち出す「データ流通圏」構想についても、米国側は当初その内容に不満を持っていましたが、安倍首相が直前のトランプ氏との会談で「私に任せてほしい」と説得し、合意へと導いたとされています。日本の外交努力が、国際会議の場で重要な調整機能を発揮していることは評価すべきでしょう。

しかし、トランプ大統領の関心は、G20サミットそのものよりも、来年11月に迫る米大統領選に集中しているように見えます。2019年6月28日のサミット夕食会前にも、トランプ氏は自身のツイッターで、米民主党の討論会に言及し、「『寝ぼけたジョー(・バイデン)』や『狂ったバーニー(・サンダース)』には良い一日ではなかったようだ」と投稿しました。「私はG20でしっかりと米国を代表している」とも書き加えていますが、その投稿内容は、国際会議への真剣さよりも、国内の政争への関心の高さを物語っていると言えるでしょう。この姿勢は、国際的な協調よりも**「米国第一」**を掲げるトランプ外交の典型であり、国際秩序の不安定化に拍車をかけていると考えます。

一方、習近平主席は今回のG20サミットの機会を利用し、トランプ氏との会談で米中貿易戦争に一定の道筋をつけたいという思惑があります。会合中にトランプ氏から挑発的な発言があっても、あえてそれには乗らず、交渉の機運を大切にするという**「忍耐の戦術」**を選んでいるとみられます。米中対立が激化する中で、両首脳がこのサミットの場でどのような着地点を見いだすのかが、世界中から注目されています。

この米中対立の隙を突いて、存在感を高めようとしているのがロシアとインドです。ロシアのプーチン大統領は、2019年6月28日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、「リベラリズムの考え方は廃れてしまった」と述べ、戦後の世界秩序を主導してきた欧米の**リベラリズム(自由主義)が、トランプ氏の登場などで崩壊しつつあるという論法を展開しています。プーチン氏はG20開幕前に、ブラジルや南アフリカなどとのBRICS(新興5カ国)**首脳会議で、米国を「保護主義」だと決めつけ、「世界経済発展の公正な新しいモデルをつくろう」と呼びかけました。これは、欧米主導の秩序から距離を置き、新興国との連携を通じて、ロシアの国際的な発言力を高めようとする巧妙な戦略です。

また、インドのモディ首相は、米中を**「てんびん」**にかける戦略をとっています。2019年6月28日には、安倍首相とトランプ大統領との会談で、「3カ国は民主主義を支持している」と、インドが人口世界一の民主主義国家であることを強調しました。しかし、そのわずか数時間後には、今度は習近平主席とプーチン大統領との会談に臨んでいます。この会談はモディ氏自身が呼びかけたものであり、インドが米中のどちらにも偏ることなく、独自の国益を追求し、外交的な選択肢を広げようとする姿勢が明確に示されています。このしたたかな外交手腕は、国際政治における新興国の台頭を象徴していると言えるでしょう。

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欧州勢の影が薄れるG7の現在

一方、かつて主要7カ国(G7)の中心的な役割を担ってきた欧州勢は、国内事情によってその影響力が低下しています。各国で**ナショナリズム(国粋主義)やポピュリズム(大衆迎合主義)**が伸長している影響で、G20サミットでの発信力が精彩を欠いています。退陣直前のメイ英首相には、かつての巧みな英国外交の面影は見られず、ドイツのメルケル首相も欧州の盟主としての威厳に欠けています。政権が不安定で発信力が低下しているのです。結果として、欧州が主要課題に据えている地球温暖化対策などの「気候変動への取り組み」は、国際会議の場で後退しがちとなっています。

サミット会場である大阪国際見本市会場(インテックス大阪)では、約20もの部屋が用意され、首脳たちは公式会合の途中でも退席し、個別の会談に臨む姿が見受けられました。まさに、ナポレオン戦争終結後の欧州秩序再建を議論した**ウィーン会議(1814年~1815年)**が「会議は踊る、されど進まず」と形容されたように、G20大阪サミットも、各国の利害が衝突し、全体としての意思決定が停滞している状況にあると言えます。会議の停滞という点で、ウィーン会議とG20大阪サミットには類似性があるのです。

ウィーン会議では、ナポレオンがエルバ島から脱出したという報せを受け、各国が自国第一の態度を改め、難航していた問題が一気に決着しました。G20サミットも、この「自国第一主義」の姿勢が散漫な会議を招いていますが、ここから各国が態度を改め、新たな国際秩序づくりへと舵を切る転換点となるのか。それとも、単なる劇場(アリーナ)型外交の舞台として終わってしまうのか。G20大阪サミットは、2019年6月29日に最終日を迎えるにあたり、その行方と結論が注目されています。

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