世界的なスポーツブランド、独アディダス(adidas)が誇る象徴的なデザイン、「3本線」の商標権をめぐり、2019年6月19日、欧州連合(EU)の一般裁判所が、その保護範囲を制限する判断を下しました。このニュースは、ファッション業界はもちろん、知的財産権に関心のある人々の間で大きな波紋を呼んでいます。アディダスは、靴や衣料品に幅広く用いられるこの3本線が、どのような向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線として、EU全域で同社の製品であることを識別できる独自性(ディスティンクティブネス)を十分に証明できていない、と裁判所は結論付けたのです。
アディダスの3本線は、同社の代名詞とも言えるマークであり、その商標(トレードマーク)としての効力をめぐる今回の判決は、長年にわたる争いの大きな転機と言えるでしょう。商標とは、商品やサービスを他の事業者のものと区別するための目印として用いられるマークや文字などのことです。今回の件でアディダスは、線の向きや使い方を限定しない、より広範な商標保護の獲得を目指していましたが、その試みは一旦、阻まれる形となりました。
この争いの発端は、EUの知的財産庁(EUIPO)が、2014年にアディダスの申請した「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」を商標として登録したことにあります。しかし、その後、2016年にベルギーの企業から異議申し立てがあり、EUIPOはこの商標権を取り消す判断を下していました。アディダス側はこれを不服として、EUの一般裁判所に訴えを起こしていましたが、今回の判断は、ベルギー企業側の主張を支持する形となったわけです。
SNS上では、この判決について「3本線がないアディダスなんて想像できない」「競合他社が似たデザインを出すかもしれない」「アディダスのイメージ戦略に影響するのでは」といった、ブランドの象徴に対する危機感や、今後のデザインへの影響を懸念する声が多く見受けられます。一方で、「3本線自体がどこまで独自性を持つのかは難しい問題だ」「デザインの多様性を認めるべき」といった、裁判所の判断に理解を示す意見も出ています。この判決は、ファッションアイテムにおける**「シンプルなデザイン」の商標保護の難しさを改めて浮き彫りにしたと言えるでしょう。
アディダスは、現地メディアに対し、今回の判決は「特定のパターンの3本線に対する商標には影響しない」という見解を示している模様です。これは、たとえば、斜めの3本線やある特定の位置に配された3本線など、「3本の平行な線」の定義を狭めた上での商標については、保護が継続される可能性があることを示唆しています。しかし、同社が目指していた「どんな使い方でも同社の商標」という広範な主張がくじかれたのは事実です。
私は、今回の裁判所の判断は、消費者の視点から見て非常に重要だと考えます。商標法は、特定の事業者がその商品やサービスを一貫して提供していることを消費者が識別できるようにするための制度です。アディダスの3本線は世界的に有名ですが、「どんな向きにも付けられる同じ幅の3本の平行な線」という非常に抽象的で広範な定義において、本当にEU全域の消費者が常にアディダスの製品だと認識できるか、という「識別力」の証明は、きわめて難しい挑戦だったと言えるでしょう。商標権の過度な拡大は、デザインの自由な創造性を阻害する恐れもあるため、今回の判断は、そのバランスを考慮したものと私は評価いたします。
アディダスには、まだこの判決を不服として、より上級の裁判所である欧州司法裁判所(ECJ)**で争う可能性が残されています。今後、アディダスの象徴的なデザインが、知的財産の分野でどのような位置づけになっていくのか、引き続き注目していく必要がありそうです。
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