2020年01月23日の東京外国為替市場において、通貨の価値が大きく変動する事態が発生いたしました。安全資産とされる「円」が米ドルに対して買われ、一時1ドル=109円50銭程度という、ここ10日ほどの間で最も高い水準まで値上がりしたのです。この背景には、中国を中心に拡大している新型肺炎の流行が、世界的な経済活動や金融市場に深刻な悪影響を及ぼすのではないかという強い警戒感があります。
市場では「リスク回避(投資家が損失を避けるために、危険性の高い資産を売って安全な資産へ資金を移動させること)」の動きが急速に強まりました。さらに、中国の国内外で数億人規模の人々が移動を行う「春節(旧正月)」の大型連休が直前に迫っていることも、事態を複雑にしています。今後の感染状況や経済への波及度合いを慎重に見極めたいと考える投資家が増えており、市場は緊迫したムードに包まれている状況です。
SNS上でもこのニュースは大きな話題となっており、「春節の移動でさらに感染が広がるのが怖い」「株価が下がって円高になる典型的なパターンだ」といった不安の声が相次いでいます。また、「旅行業界やインバウンドビジネスへの大打撃は避けられないだろう」と、実体経済への悪影響を具体的に懸念する投稿も多く見られました。多くの人々が、今回の事態を単なるマネーゲームではなく、自分たちの生活に直結する大問題として捉えているようです。
日本総合研究所の牧田健氏は、新型肺炎の存在が、ようやく見え始めていた世界景気の回復兆しに冷や水を浴びせる可能性を指摘されています。感染の拡大を防ぐために個人消費や企業の生産活動が厳しく制限されれば、それは巡り巡って実際の経済データに悪い数字として表れてくるでしょう。投資家たちが現時点で積極的に攻めの投資を行えず、守りの姿勢に入ってしまうのは当然の判断だと言えます。
特に投資家たちの恐怖心を煽ったのが、2020年01月23日に中国湖北省武漢市が発表した、鉄道や航空機などの公共交通機関の一時運行停止という異例の措置でした。この劇的なニュースによって、ウイルスの脅威が極めて深刻なレベルにあることが市場に強烈に印象付けられたのです。移動制限は経済の血液とも言える「人の流れ」を止めることを意味するため、市場に走った激震の大きさを物語っています。
中国では2020年01月24日から待望の春節連休がスタートしますが、大手旅行サイトの予測によると、期間中の旅行者はなんと4億5000万人にも上る見込みです。専門家からは、近年の高速鉄道網の発達やマイカーの普及により、国や都市をまたぐ人々の大移動を完全にコントロールすることは過去よりも遙かに難しくなっているという、鋭い分析も出されています。
為替市場の動きに拍車をかけたのが、アジアの主要な株式市場における株価の急落でした。外為どっとコム総合研究所の神田卓え氏が分析するように、上海や香港の株式市場が下落したことで投資家の恐怖心がさらに増幅され、それが円買いへの連鎖反応を生み出したのです。金融市場はすべてが繋がっており、株安がさらなる円高を呼び込むという、負のスパイラルが形成されています。
筆者の見解といたしましては、今回の円高急進は世界経済の先行きに対する「黄色信号」であると捉えています。グローバル化が進んだ現代において、感染症の拡大は一国の問題に留まらず、サプライチェーン(部品の調達から製造、販売までの一連の流れ)の分断や観光業の冷え込みを通じて、日本経済にも確実にはね返ってきます。市場がこれほど敏感に反応している以上、私たちは目先の為替レートの数字だけでなく、その裏にある実体企業の業績悪化リスクに対して、今のうちから最大級の警戒を払っておくべきでしょう。
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