世界中で緊張が高まっています。中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大により、経済の先行きに対する不安が株式市場を直撃しました。2020年1月23日の東アジアの株式市場では、主要な株価指数が軒並み前日比で1%から3%も下落する事態に追い込まれています。
SNS上でも「春節の旅行キャンセルが相次ぎそう」「楽しみにしていた連休なのに、経済へのダメージが怖すぎる」といった悲痛な声が次々と投稿されました。多くの人々がこの異例の事態に強い関心を寄せています。
日経平均株価は前日比235円安の2万3795円で取引を終えました。さらに、中国の上海総合指数は2.75%の大幅な下落を記録したほか、香港や韓国の市場でも売り注文が膨らんでいます。専門家は、大型連休である「春節」を目前に控え、中国人旅行客による爆買いなどの消費活動が世界的に冷え込むことを危惧しているようです。
原油や銅も急落!実体経済への深刻な影響
今回の動揺は株式だけにとどまりません。商品先物取引市場、つまり原材料やエネルギーの将来の価格を売買する市場でも異変が起きています。世界最大の原油輸入国である中国の製造業が停滞するとの見方から、ニューヨーク原油先物価格は1バレル56ドル弱まで急落し、約2カ月ぶりの安値を付けました。
また、中国が世界の消費量の半分を占める「銅」の価格が1カ月ぶりの安値に沈んだほか、アルミニウムやニッケルなどの非鉄金属も一斉に値を下げています。工場などの生産活動がストップすれば、資源の需要が世界規模で停滞するのは避けられないという見方が強まった結果でしょう。
過去の苦い記憶も人々の脳裏をよぎります。2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、訪日外国人の数は大きく落ち込みました。今回も同規模の被害が出た場合、日本の国内総生産(GDP)を年率で0.1%近く押し下げるという試算もあり、看過できない状況です。GDPとは、国内で一定期間に生み出された付加価値の総額のことで、国の経済の健康状態を表す重要な指標となります。
直撃を受けるインバウンド銘柄と急騰するマスク関連株
東京株式市場では、訪日外国人による消費、いわゆる「インバウンド需要」への依存度が高い企業が厳しい局面に立たされています。大手の百貨店株が2%以上下落したほか、訪日客に大人気のベビー用品メーカーや化粧品ブランド、さらには日本航空などの空運株も売り込まれる展開となりました。
その一方で、暗いニュースの中で爆発的な買いを集めている分野も存在します。衛生意識の高まりを背景に、マスクメーカーである川本産業の株価が急騰しました。さらに、ウイルス検出キットの開発を手掛ける中国のバイオ企業など、医療や医薬品に関連する銘柄には投資家の熱い視線が注がれています。
過去に発生した中東呼吸器症候群(MERS)の時は、世界的な大流行に至らなかったため日本経済への影響は限定的でした。しかし、今回の新型肺炎はSARSに匹敵する警戒感が必要かもしれません。感染拡大の終息には半年程度を要するという見方もあり、しばらくは慎重な姿勢を崩せない日々が続きそうです。
編集部EYE:見えない敵に立ち向かう市場、今こそ冷静な視点を
目に見えないウイルスの脅威は、私たちの健康だけでなく経済の血流まで止めてしまう恐ろしさを秘めています。百貨店や航空株の下落はショックですが、こうした危機的状況だからこそ、マスクや医療関連といった社会に不可欠な産業の価値が再認識される側面もあるでしょう。
投資家の皆様におかれましては、SNSにあふれる過度な不安に流されることなく、企業の実態や感染症対策の進展を冷静に見極めることが大切です。市場が再び活力を取り戻すその時まで、今はリスク管理を最優先に徹底し、動向を注視していくべきではないでしょうか。
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