2020年01月16日の東京株式市場において、日経平均株価は前日の終値を挟みながら、非常に狭い範囲での小幅な値動きに終始しています。世界中が注目していたアメリカと中国による「第1段階」の貿易合意署名が無事に執り行われたものの、市場の反応は限定的なものにとどまりました。すでにこの材料が事前に織り込まれていたことから、投資家たちの間では目先の材料が出尽くしたという受け止め方が広がっているようです。
こうした膠着状態のなか、市場を揺るがす新たなニュースが飛び込んできました。厚生労働省から、中国の武漢市に渡航歴がある神奈川県在住の男性から新型肺炎の陽性反応が出たと発表されたのです。国内で初めて感染者が確認されたというこの報道は、株式市場の物色動向を一変させる大きな引き金となりました。SNS上でも「ついに日本国内に入ってきたか」「パンデミックになったら経済への影響が心配」など、先行きの不安を吐露する声が相次いでいます。
この事態を受けて、個別の業種では明暗がくっきりと分かれる展開を迎えました。とりわけ大きな打撃を被っているのが、人の移動が制限される懸念から売りが膨らんだ空運セクターです。飛行機を利用する旅行客やビジネス客が減少するリスクを警戒した投資家が、敏感に反応して手仕舞い売りを急いでいます。機械や海運といった景気の動向に左右されやすい「景気敏感株」も、世界経済の減速を警戒する動きから軟調な推移を余儀なくされました。
その一方で、事態の解決に向けた期待感から、医薬品セクターには強い買い注文が集まっています。このように、特定の社会的イベントや災害、疾病の流行などによって需要が急増すると見込まれる銘柄は「関連銘柄」と呼ばれ、市場が不安定な局面で資金の逃避先になりやすいのが特徴です。マスクの製造企業や防御服を手掛ける企業など、感染症対策に直結する企業の株価が急上昇しており、投資家たちが素早く防衛策を講じている様子が窺えます。
原油価格の上昇に伴って石油関連株が堅調さを維持しているものの、市場全体の視線はやはり感染症の動向に注がれていると言えるでしょう。編集部としては、今回の新型肺炎の発生が一時的な心理的ショックにとどまるのか、あるいは実体経済を冷え込ませる長期的なリスクになるのかを冷静に見極める必要があると考えています。過度なパニックに陥ることなく、企業のファンダメンタルズ、つまり財務状況や業績といった本来の企業実力を精査していく姿勢が求められます。
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