2019年、国内粗鋼生産が1億トン割れの衝撃!鉄鋼業界が直面する「量から質」への大転換

日本の基幹産業を支える鉄鋼業界が、大きな転換点を迎えています。2019年12月21日現在、今年の国内粗鋼生産量はリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来、10年ぶりに1億トンという大台を割り込む見通しとなりました。鉄鋼連盟が発表した2019年1月11月から2019年11月までの累計生産量は前年比4.5%減の9152万7千トンに留まっており、かつての輝きを取り戻すには厳しい数字が並んでいるのです。

「粗鋼」とは、高炉などで鉄鉱石を精錬して作られた、まだ加工される前の鋼鉄の塊を指します。いわば産業の「米」とも呼べる素材の生産量が落ち込んでいる事実は、日本経済のエンジンにブレーキがかかっている証拠かもしれません。SNS上でも「ついに1億トンを切るのか」「製造業の先行きが不安」といった、先行きの不透明感を嘆く声が広がっており、業界全体の冷え込みを懸念するムードが強まっています。

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相次ぐ災害とトラブルが生産現場を直撃

なぜ、2019年の生産はここまで低迷してしまったのでしょうか。その要因の一つに、予想だにしない自然災害と生産現場での不測の事態があります。2019年9月上旬に日本列島を襲った台風15号は、日本製鉄の君津製鉄所に甚大な被害をもたらしました。さらに子会社の呉製鉄所での火災など、不運なトラブルが重なったことも大きな痛手です。JFEスチールもまた、高炉のトラブルからの復旧に時間を要し、供給体制が整いませんでした。

こうした現場の混乱に加え、世界的な需要の蒸発が追い打ちをかけています。長期化する米中貿易摩擦により、中国や東南アジアの景気が減速したことで、自動車や工作機械向けの鋼材需要が激減しました。日本の鉄鋼製品はその約4割が輸出に回されているため、海外市場の不調は日本の製鉄所の稼働率にそのまま直結します。世界経済の荒波に、日本の重厚長大産業が翻弄されている姿が浮き彫りになった格好です。

中国勢の巨大化と日本が生き残るための「質」への戦略

隣国の中国に目を向けると、凄まじい勢いで業界再編が進んでいます。巨大企業である宝武鋼鉄集団が他社を統合し、1社だけで年間1億トンを生産するモンスター企業が誕生しようとしているのです。もはや規模の勝負で中国に立ち向かうのは現実的ではありません。私は、今こそ日本が「量の呪縛」から解き放たれ、他国には真似できない「高付加価値品」へのシフト、すなわち徹底した特化戦略を貫くべきだと考えます。

2020年の見通しも、消費増税の反動や設備投資の買い控えにより、決して楽観視はできません。しかし、厳しい時こそ技術力の見せどころです。自動車の軽量化に貢献する高張力鋼(ハイテン)など、日本の技術が集約された「質の高い鉄」への需要は必ず存在します。単なる減産を悲観するのではなく、より効率的で強靭な生産体制へ作り替えるための「進化の痛み」として、この1億トン割れという事態を捉え直すべきでしょう。

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