三菱電機が、かつてない正念場を迎えています。2019年10月31日、同社は2020年3月期の連結純利益が前期比7%減の2100億円になる見通しを発表しました。この背景には、中国企業の投資意欲減退により、同社の稼ぎ頭である「FA(ファクトリーオートメーション)」、つまり工場の自動化機器が苦戦を強いられているという切実な事情があります。
2021年3月期に向けて掲げてきた「売上高5兆円、営業利益率8%以上」という野心的な目標に対し、杉山武史社長は「大変厳しい状況」と苦渋の表情を隠せません。かつて掲げた「強い事業をより強く」というスローガンも、目まぐるしく変化する市場環境や、予想を上回る中国景気の減速という荒波に飲み込まれつつあるのが現状でしょう。
ネット上では「三菱電機ほどの大手でも中国の影響をこれほど受けるのか」といった驚きの声や、「FA一本足打法からの脱却が必要だ」という鋭い指摘も散見されます。実際に過去5年間の営業利益率を振り返ると、2017年度の7.3%をピークに足踏みが続いており、今回の2019年度見通しでは5.7%まで低下する見込みで、まさに試練の時と言えます。
米中摩擦の影と「ソリューション型」への出遅れ
特に深刻なのは、米中貿易摩擦の影響です。2019年4月から9月期において、FA機器を含む産業メカトロニクス部門の営業利益は前年同期比で47%も激減しました。エアコンなどの家庭電器事業は堅調ですが、屋台骨である産業機器の落ち込みを補うには至っていません。この苦境は単なる景気変動だけでなく、構造的な課題も浮き彫りにしています。
三菱電機は高いシェアを誇るハードウェアに安住するあまり、顧客の課題を総合的に解決する「ソリューション型営業」への転換が遅れたとの見方もあります。皮籠石斉常務は、スマホや次世代通信規格「5G」向けの需要回復が想定より遅れるとの見通しを示しました。5Gとは超高速・低遅延の通信技術ですが、その普及を待つ余裕は今の同社にはありません。
「食」と「IoT」を融合させた新たな挑戦
しかし、杉山社長も手をこまぬいているわけではありません。モノがインターネットにつながる「IoT(アイオーティー)」を軸に、サービス事業の強化へ舵を切っています。2019年5月には米スタートアップ企業に出資し、人間と共に作業する「協働型ロボット」の展開を加速。労働力不足に悩む日本の製造現場に新たな光を当てようとしています。
さらに面白い試みが、2019年11月19日から銀座の施設で開催されている「デジタル収穫祭」です。ここでは、あえて同社にとって異色な「食」をテーマに掲げました。人工光を使った屋内型農場や、衛星を利用した農機の自動運転など、自社の技術がどう社会に貢献できるかを可視化し、新たなビジネスチャンスを模索する貪欲な姿勢が伺えます。
日立を追う「4領域」への変革と今後の展望
今後の鍵を握るのは、杉山社長が打ち出した「ライフ」「インダストリー」「インフラ」「モビリティ」の4領域への事業集約です。これはライバルの日立製作所が先行して進める改革と重なる部分が多く、業界内では「三菱電機もいよいよ選択と集中を迫られている」との見方が強まっています。まさに、生き残りをかけた事業モデルの刷新です。
2019年10月には組織横断的な新部署を立ち上げるなど、変化の兆しは見えますが、不採算事業の整理についてはまだ慎重な姿勢を崩していません。しかし、自動車部品メーカーの再編が加速する中、三菱電機にもより踏み込んだ提携や撤退の決断が求められるでしょう。現状維持は衰退を意味する時代、名門企業の真価が今こそ問われています。
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