2019年11月25日、テクノロジー界に激震が走っています。かつて世界を席巻した日本発の新素材「カーボンナノチューブ」が、次世代半導体の救世主として再び大きな注目を浴びているのです。これまで私たちが恩恵を受けてきたシリコン製半導体は、微細化の限界に直面し、性能向上の壁にぶつかりつつあります。その突破口として、炭素原子が筒状に並んだこの魔法の素材が、今まさに主役の座を奪おうとしています。
カーボンナノチューブとは、1991年9月24日に名城大学の飯島澄男教授が発見した、直径が1ナノメートル(10億分の1メートル)ほどの極微細な物質です。鋼鉄を遥かに凌ぐ強度と優れた導電性を併せ持つこの素材は、まさにナノテクノロジーの結晶と言えるでしょう。SNS上でも「ついにSFの世界が現実になるのか」「日本発の技術が世界を変える瞬間を見たい」といった期待に満ちた声が数多く寄せられており、その潜在能力への関心は高まるばかりです。
立ちはだかる壁を突破した米中ベンチャーの躍進
しかし、実用化への道のりは決して平坦ではありませんでした。この素材には電気を流す「金属型」と、条件によって流したり止めたりできる「半導体型」が混在して生成されるという難点があったのです。この性質の使い分けが長年の課題でしたが、2010年代後半に入り、米国のナンテロ社などが独自の精製技術を確立したことで状況は一変しました。彼らは2020年を目標に、消費電力が極めて低い次世代メモリの試作を計画しています。
さらに2019年8月には、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)が、1万4千個以上のカーボンナノチューブを集積させたCPUの中核回路の開発に成功しました。これは、理論上の夢物語が現実に動き出した歴史的な瞬間です。一方で中国勢も、北京大学を中心に猛烈な追い上げを見せています。米中貿易摩擦という国際情勢を背景に、独自の半導体技術を確立しようとする国家規模の熱量が、研究開発を強力に後押ししている状況にあります。
日本の存在感低下への危惧と未来への提言
翻って我が国の現状に目を向けると、一抹の寂しさを禁じ得ません。発見国である日本は、現在リチウムイオン電池の材料など「素材」としての活用には強みを持っていますが、電子素子としての応用研究では海外勢にリードを許しています。国内の半導体メーカーの衰退に伴い、せっかくの高度な研究を製品化する受け皿が失われ、国の支援も十分とは言えない状況が続いているのです。
私は、日本が再びこの分野でリーダーシップを取り戻すためには、産官学が一体となった抜本的な投資が必要だと確信しています。優れた「種」を撒いたのが日本人であるならば、その「実」を収穫するのもまた日本企業であってほしいと願わずにはいられません。IoT時代の心臓部を担う技術だからこそ、海外勢に負けない独自の強みを磨き上げること。それこそが、2020年代以降の日本の産業競争力を左右する鍵となるのではないでしょうか。
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