オーストラリアの政界が、中国による大規模な「内政干渉」の疑惑に大きく揺れています。2019年11月24日、現地のテレビ番組「60ミニッツ」が報じた内容は、まさに映画のような衝撃的なものでした。中国の情報機関が、5月に実施された連邦総選挙において、中国系の男性を候補者として擁立しようと画策していたというのです。
その手法は極めて巧妙で、中国当局の関係者とみられる実業家が、メルボルンで高級車ディーラーを営んでいた30歳代の男性に対し、約100万豪ドル(日本円で約7400万円)もの多額の選挙資金提供を申し出たとされています。この資金をバックに与党・自由党から出馬させ、政界の内部から機密情報を奪取することが目的だったと推測されています。
謎に包まれた「候補者」の死とスパイの亡命
しかし、この事件には不可解な影が付きまとっています。資金提供を持ちかけられた男性は、約1年前にはすでに豪州の治安情報局(ASIO)に相談していましたが、2019年3月に市内のモーテルで遺体となって発見されました。豪州当局は死因の詳細を伏せており、このミステリアスな展開に、SNS上では「恐ろしすぎる」「背後に何があるのか」と不安の声が広がっています。
さらに、2019年11月23日には、20歳代の中国人スパイが豪州へ亡命を申請したというニュースも舞い込みました。彼は香港や台湾での工作活動に従事していたとされ、ASIOに対して貴重な内部情報を提供している模様です。このように、複数の工作活動が明るみに出る現状は、豪州にとってかつてない安全保障上の脅威となっていると言わざるを得ません。
狙われる「ファイブ・アイズ」の機密情報
なぜ中国はここまで豪州を狙うのでしょうか。それは豪州が、米国、英国、カナダ、ニュージーランドと共に機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」の一員だからです。もし中国の意図を汲む議員が誕生すれば、同盟国間の最高機密へアクセスされるリスクが生じます。ASIOの長官も、外国からの干渉を阻止すべく、異例の声明を出して警戒を強めています。
専門用語で「ファイブ・アイズ」とは、第二次世界大戦以来の協力体制に基づき、通信傍受などのインテリジェンス(機密情報)を相互に融通し合う5カ国の枠組みを指します。この強固な同盟の鎖を断ち切るために、中国は「一帯一路」という広域経済圏構想を掲げ、太平洋地域での影響力拡大を急いでいるのでしょう。
太平洋を舞台にしたパワーゲームの激化
太平洋地域では今、中国と台湾、そして米国を巻き込んだ激しい勢力争いが展開されています。2019年9月には、ソロモン諸島とキリバスが相次いで台湾と断交し、中国との国交を樹立しました。これに対し、台湾の蔡英文総統や米国のポンペオ国務長官も現地を訪問し、防衛や経済支援の強化を打ち出すなど、まさに「静かなる戦争」が繰り広げられています。
私自身の考えを述べれば、これは単なる一国のスキャンダルではなく、民主主義の根幹を揺るがす重大な事態です。経済的利益を餌に政治を操作する手法は、他国でも起こり得る「明日は我が身」の問題でしょう。自由な社会を守るためには、情報の透明性を高め、見えない干渉に対して私たち市民も常に高い意識を持つ必要があると感じてなりません。
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